今、マイブームは隣の席の赤井をハメる事だ。
彼とは毎日一緒に昼飯を食っている。
最近の生活の中で一番俺と過ごす時間が長いのが彼だ。
彼はバカである。
いや、頭が悪いというのではない。
間が抜けてるというか、まぁ憎めない奴だ。
気はすごい優しく、キレる事などありえないくらいの気のいい奴だ。
彼は人の悪口を言わない、そして自分の事が好きだ。
機嫌の悪くなる事も無い。俺を慕ってくれてる。
だから俺はツレに選んだ。
かわいい弟分と言った所だ。
その赤井だが、彼は切羽詰った時にすぐに焦るクセがある。
授業はあまり聞いてない。
こないだもそれで先生に「ココの変数はどこまで有効か。じゃあ赤井、答えて。」と当てられ、
慌てて、「あ、スイマセン。もう一度お願いします。」と聞き直した。
ちなみに答えは「そこの関数が終わるまで。」だった。
ココからが俺の腕の見せどころだった。
マイブーム、赤井ハメの時間だ。
俺が小声で「ずっと、ずっと。」と囁く。
もちろん正しい答えではない。(笑)
ところが彼は何を聞き違えたのか、間違った答えをさらに聞き違えて、
自信満々に「ゼット。」と言い放った。
先生「え!?」と言い、口をポカンと開ける。
さらに俺はたたみ掛ける。
「合ってるよ。合ってる。」と口元を隠しながら囁く。
「ゼット。」
俺の声援を受け、彼は元気良く答えた。
先生、聞こえてないんですか?といった勢いで。
もちろんの事ながら、ゼットなんて文字はソコの問題に出てきてもいない。
みんなは大爆笑。
彼はソコで「有也さん、ハメましたね!」とデカい声で言う。
クラスは2度目の大爆笑。
俺は「え?俺は別に独り言を言ってただけだよ。」と笑顔で答える。
そしてその日の午後の授業。
科目はプログラム言語からコンピュータの動作原理に変わっていた。
その日の授業内容は会社内でのシステム設計についてだった。
プログラマーの上にはSEというものがある。
SEとはシステムエンジニアの略なのだが、
要するにプログラムを委託されて作ったりする場合、
顧客と話してどんなプログラムにするかを決め、
その仕事を複数のプログラマーに分担して割り振るというようなものだ。
そして先生が授業中に「SEになるにはこの知識が必要不可欠です。」と言った。
すると赤井君は「有也さん、SEってなんスか?」と聞いてきた。
ハッキリ言って入学して既に3ヶ月が経っているのにSEという職業すら知らないのはかなりヤヴァい。
俺はここでまたウソを教えた。
「SEっていうのはSとEの後にさらに一文字入るんだよ。」
すると赤井君、「Xですか?」と一言。
俺はさらに続けた。
「SEってのは無人島に漂流しちゃった人が出す信号だ。」
「それはウソっすよ。それは俺でもわかりますよ。」
ちっ。バレたか。
そんな話をしていると、左隣の席の頼子ちゃんが、
「無人島に漂流した時に人文字でやるんですよね。」と話に乗ってきた。
俺はこれを聞いて大爆笑。
俺と頼子ちゃんは二人でSとEの人文字を練習し始めた。
で、俺たちが笑っていると先生が呆れた顔で「なんか面白い事でもあるのか?」と言ってきた。
俺は間髪入れず、さらっとこう言った。
「いやぁ、赤井が『SEってその後にXって文字が入るんですよね。』って言うもんですから。」
クラス内にクスクスと笑い声が聞こえる。
すると先生が「赤井〜。女の子がいるんだからもう少し気を使ってくれよ〜。」と一言。
赤井君、慌てて「そんな事言ってないっすよ!」と一言。
再びクラスは大爆笑。
この日は面白かったなぁ。
ちなみに赤井のマイブームはスクリーンセーバーをずっと見ている事と、
YAHOOオークションで一番値段の高い物を探す事。
見てるだけでも飽きないです。彼。
彼がプログラムを打つと人の数倍のエラーが出ます。
で、明らかにスペルが間違ってるのに「有也さん、このパソコンぶっ壊れてますよ。」と言ったりね。
「ペン回し上手いな」と俺が言うと「日本で3位ですからね。」と意味不明の発言。
彼は何かにつけて「日本3位」と言い張る。
で、「じゃあ何かウルトラテクを見せろ」と俺が言うと、
「今、手首を痛めてるんですよ。」と一言。
見て良し、いじって良し、ハメて良し。
俺の隣の席に笑いの神様が降りてきてます。(笑)
そうそう。赤井には一つすげえ能力があるんだ。
それは速読。
彼よりも早くテストを終える奴はいない。
早い人でも20分はかかるという問題を彼は10分以内に終える。
しかし、適当にやってるわけじゃない。
彼は考えるのと読むのと書くのが恐ろしく早いんだ。
彼が全力で勉強したらきっと天才になると思うよ。
でも今は間違いだらけ。(笑)
2003/07/16
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