ロイは狼狽していた。
目の前で女に泣かれる事など初めてだったからだ。
しかも目の前で泣いているのはいつも元気に振舞っているシンディ。
彼女がまさか涙を流すほどの悩みを抱えているなんて。
ロイはシンディの隣に座った。
しかし、ロイには自分がどうしたらいいのかわからなかった。
こんな時になんと声を掛ければいいものか。
こんな時に本物の男はどうするのか。
ロイは彼女に掛ける言葉が思い浮かばなかった。
ただ、無言でシンディを抱きしめた。
彼女の肩を優しく包み、泣き崩れている彼女の頭に頬を寄せた。
自然と涙が流れてきた。
彼女の辛さがトクトク流れ込んできた。
ロイは涙を抑える事が出来なかった。
言葉を掛ける事だけが慰める事ではない。
一緒に寄り添うだけでいいのだ。
30分後。
目の前にはいつもの笑顔で笑いかけるシンディが立っている。
「ロイ、いつまで泣いてるの?行くわよ。」
「シンディ、俺に力になれる事があったら・・・。」
「私は大丈夫よ。気を使わないで。」
「でも・・・。」
「行きましょう。」
「あ、あぁ・・・。」
ロイは自分のふがいなさに打ちひしがれていた。
シンディの辛さは本当の意味で救えたわけではない。
シンディの心はその辛さを殻に閉じ込める事で平常を装っているのだ。
ロイはそれに気付いてもどうすればいいのかわからなかった。
翌日。
みんなの前で笑っているシンディがいた。
「おはよう、ロイ。」
「シンディ、昨日の事だけど・・・。」
「あぁ、疲れていただけよ。忘れて。」
「でも・・・。」
「私、用があるの。もう行かないと。」
「あぁ、引き止めてすまない。」
「じゃあね。」
「あぁ、また。」
ロイはシンディの後ろ姿をずっと見ていた。
彼女が強く生きようと決めたのが伝わってくる。
ロイはふと、こう叫んだ。
「いつでも!電話して来いよ。」
シンディはいつもの笑顔でこう答えた。
「大丈夫。何も悩みは無いわよ。」
家に帰り、ロイは泣いた。
強くなろうと決めた。
2004/03/19
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