恋愛マニュアルプロローグ

プロローグでは恋愛に関するコラムで
男女別マニュアルに該当しないもの、
または男女両方見て欲しいものを
そこはかとなく載っけております。

 46   駆け引き考察。
 
一軒の居酒屋。
合コン at night 11PM
 
 
「あ〜なんか酔っちゃった〜。」
ゴキゲンな様子で綾香は悟を見ながら微笑んでいる。*1
 
「おいおい、大丈夫かよ〜。」
悟が綾香の肩を押さえながら言う。*1
 
「悟く〜ん。」
綾香がニコニコしながら悟に抱きつく。*2
 
「ちょっと外の風に当たって酔い覚ました方がいいな。ほら、行くぞ。」
悟が綾香に肩を貸す。*3*2
 
「うーん・・・。」
と言いながら綾香は悟にフラフラもたれかかる。*4
 
「悟くん、綾香をお願いね〜。」
「襲うなよ、悟〜。ハハハ。」
二人を見送りながら外野が声をかける。
 
「ふぅ〜。大丈夫か?」
隣の席の悟が綾香の顔を覗き込む。*3
 
綾香はさっきまでの笑顔とはうってかわって、色っぽく憂いの表情を浮かべていた。*5
 
綾香はそのまま悟にキスをした。*6
 
「・・・チューしちゃったー。」
綾香がまた笑顔に戻る。*7
 
「あーぁ、オマエもう完全に酔ってんだろー。」
悟は笑いながらも呆れたような表情で綾香の両肩を支えている。*4
 
「ホントは酔ってないんだ・・・。」
綾香が小さく呟く。*8
 
「えっ・・・。」
悟が驚いた声を漏らす。*5
 
「今度は二人で会いたいな・・・。」
綾香の直球。*9
 
「え、ホントに?」
悟はからかわれているんじゃないか、という表情を浮かべる。
嬉しい表情も織り交ぜて。*6
 
「イヤなら別にいいんだけど。」
綾香がスネたような顔でふくれてみせる。*10
 
「いやいや、そんな事無いって!会おうよ。いつ頃ヒマ?」
慌てて悟が取り繕う。*7
 
「ホント?嬉しいな。私ねぇ、水族館に行きたいの。」
綾香が悟に身を預けながらそう呟く。*11
 
「どこでも連れてってやるよ。」
悟が綾香の髪を撫でながら笑顔で言う。*8
 
 
合コン at night 11PM 
慣れた男と慣れた女の出来レース。
 
 
 
:語句解説:
【出来レース】
あらかじめ筋書きが出来上がっていて結果がわかっている勝負の事。
 
 
:考察:
ここではいくつかの駆け引きや技が入っている。
順を追って説明しよう。
 
まずは綾香。
 
:最初に「酔っちゃった〜」の一言を言う事で、
  「酔った勢い」という言い訳を使うための前フリを仕掛けておく。
  最初からターゲットは悟。
 
:1で前フリが済んでいるので、堂々と「酔った勢い」を利用して悟に抱きつく。
  どさくさに紛れた形の攻撃で相手をドキドキさせる。
 
:ここで悟に「外に行こう」と言われなかったとしても、
  「ちょっと外の風に当たりたいな・・・連れてって?」の一言で、
  逆に誘って外に連れ出させる予定だった。
  今回は悟の方から言われたのでそれに乗っかる形を取る。
 
:ここでの「うーん・・・。」というフリは悟に対してではなく、周りの人間に対してである。
  「介抱役」という立場を利用した悟の連れ出しを合法的にするための酔ったフリ。
 
:笑顔とのギャップ、必殺の「憂いの表情」でドキッとさせる攻撃。
 
:悟のドキッとしてる顔を見たら咄嗟のキスで心を奪う。
 
:「・・・チューしちゃったー。」の一言は照れるのをごまかしている『フリ』をするために、
  わざと「酔っ払いキャラ」を演じている。
 
:「ホントは酔ってないんだ・・・。」の一言で、
  悟を連れ出す口実作りに酔ったフリをしたのだと思わせる。
  さらにキスをした事が「酔った勢い」ではないと暗にわからせる作戦。
 
:7をふまえてのストレート攻撃。
  決め球はやはりストレートでなくては。
 
10:ここでわざとふてくされたフリをしておく。
 
11:ここでふてくされたフリを解き、心から喜ぶフリをする。
  後々まで相手に「綾香のゴキゲンを取る事の気持ち良さ」を植えつけておくためだ。
  付き合ってからの関係が「自分が下」にはならないように計算してるわけだ。
  あくまでも適度に追いかけさせる事の重要さを理解している証拠。
 
 
一方、悟の場合。
 
:「おいおい、大丈夫かよ〜。」の一言で、
  しょうがねぇなぁ、とでも言わんばかりに介抱役を掴む前フリ
  介抱役を掴む前フリをしておいたので肩を押さえるのも不自然ではなくなる
  自然なボディタッチは酔ってても有効。
 
:「介抱役」をフルに活用する事で、綾香を外に連れ出し、二人きりになれる場に移動
  さらに「介抱役」という立場上、「綾香の面倒を見てやっている」というタテマエも出来る。
 
:「介抱役」という立場上、聞かねばならない事だが、それはあくまでもタテマエで、
  これを振る事で相手の反応を伺う、いわば様子見の一言
 
:キスされて嬉しい照れくさい気持ちを冷静な言葉ではぐらかす。
  俺はそんな事で動揺しないぜ、という余裕を見せるため。
  さらに相手がどういう気持ちでキスしたのかを探るための様子見の言葉でもある。
  「勘違いしてはいけない」と自分に言い聞かせて平静を保つための言葉でもある。
  あくまでも「介抱役」というお兄さん的なスタンスを崩さないための言葉でもある。
  両肩を支える事で「心配してる優しい人」の路線で行く事を諦めない。
 
:ここではある程度、わざとやってるんだろうと思ってても驚いたフリをする。
  つまり、「相手の作戦にハマった。」というタテマエを作るためでもあり、
  そして相手が取った作戦に「成功」という結果を作り、
  気持ち良くこの場に居させるためでもある。
 
:5に引き続き、出来レースとわかっていてもまだ防衛線を張る。
  しかし、嬉しい表情を織り交ぜる事で相手の作戦を裏切らないようにする。
 
綾香の立場を立てるための一言。
  防衛線をこれ以上張る必要は無いため、ここで解いておく。
  ここでさらに焦らして相手より上の立場を取る事も可能だが、
  それよりも約束を取り付ける方をここでは優先する。
  慌てるのも演技で、相手の誘いが予想外で嬉しいと思っているように見せるのだ。
 
:「連れてってやる」の一言で「ドンと来い主義」をアピール。
  加えて綾香の希望を気持ち良く聞いてやり、次に繋げる。
  あやすように髪を撫でて交渉成立の合図を出し、出来レースの終了を表す。
 
 
:あとがき:
今回の考察はあくまでも一例。
別のパターンの考察も出来るのだが、結果は同じなので今回はこれで良しとする。
読者のみんなの駆け引きに対する概念が少しでも深まる事を願う。
 
 
2004/05/07


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