「有也さん、アリがデカくなったら強いっすかね?」
赤井のそんな一言がバカ話の始まりだった。
「いや、このぐらい(約30cm)でも踏めば一発だろ。」
「いや、そんなもんじゃないんすよ!こんなん(約50cm)ですよ!?」
「うーん、それでも殺せるだろ。」
「ヤツラのアゴは強いんすよ!」
「いや、噛まれる前に殺すって。」
「いや、ヤツラは硬いんすよ!」
「…そうか。ヤツラが50倍になったら頭の硬さも50倍か…。」
「そうっすよ!メチャ硬いんすよ!」
なんで赤井はそこまでアリを見込んでるんだろう…。
やっぱコイツ変。でもそこが一緒に居て面白いトコだ。
「まぁヤツラも集団だから強いだろうなぁ。」
「そうっすよ。人間、あっという間にやられちゃいますよ。」
「しかし50cmってのは微妙。」
「じゃあこのぐらい。(1m)」
「あーそれなら勝てないわ。人間食われちゃうね。」
「そうっすよヤツラをナメちゃダメっすよ。」
いや、だから何でそこまでアリの味方だオマエ。
「うーん、じゃあ仮に1mのアリが作れたとしよう。そこで働きアリを作ったらバカだな。」」
「あ、タマゴ産めない!ノンノン!女王アリ作ります。」
「女王アリ作ってもオスの羽アリ作らなかったら繁栄しないな。」
「そうっすね。」
「俺、タバコ買って行くわ。」
「あ、はい。行きますか。」
ピッ コトン チャラチャラ
「あータバコ美味い。」
「で、有也さんアリは…。」
「まだ引っ張るのかよ!意外としつけぇなオマエ!(笑)」
「このネタで三日イケますよ!」
「何がイケんだ。どこ行っちゃうんだオマエ。」
っていうか俺はいつもボケなのに赤井と居るとツッコミになるのはナゼだ?
「ヤツラ絶対に超速いっすよ!」
「うーん、アリの体長が1mだとしてヤツラは普段どのぐらいの速さだっけ?」
「超速いっすよ!このぐらいっすよ!」
「うーん、一秒に体長の3倍くらいか。…となると、一秒に3mで…。」
「おぉ。おまえら何やってんだ?」
「あ、先生。ちょっと聞いて赤井がこんなデカいアリが居たら強いかなって言うんだけど。」
「あぁ、そういやちょっと前にそんな映画があったなぁ。」
「え!マジっすか!?超見てぇ!」
「あぁ、あともっと面白いのあったぞ。殺人ピーマンとか。」
「え…それはちょっと違うなぁ。せめて動物でお願いします。」
「バカ!超面白ぇんだって!そのピーマンってのはな、手足が生えてて…。」
「うわーつまんなそう。」
「んで、子供ってのはピーマンが嫌いだろ?で、いつも捨てられちゃってるんだよ。その恨みで子供たちをメッタ刺しにしちゃうの。」
「グロっ!っていうか手足生えてる時点で怖いよ。」
「五反田の方にミニシアターみたいな小さい映画館があってな。そこでやってたんだ。」
「ふーん。」
「授業始まる前に教室入れよオマエら。」
「あーい。」
−次の休み時間−
「デカいアリに突撃されたら足折れますよ!」
「いや、折れねぇよ。そこまでじゃない。せいぜい弁慶(足のすね)イタタタくらいだろう。」
「だってヤツラは超早いんすよ!?折れますよ!」
「うーん、ヤツラが一秒間に歩く早さを体長の3倍だとして・・・。1mのアリだから3mか。となると秒速3mで一分で180m。一時間で…10800mだな。時速10,8kmだ。」
「あれ?意外に遅いっすね。」
「だろ?時速10kmじゃ折れないよ。ヤツラが30kgだとしても。」
「あ、アリだ。有也さん!やっぱ5倍くらい歩いてますよコイツ!」
「あ、ホントだ。だとすると5×3600で時速18kmか。そこそこ早いね。でも足は折れないよ。相当痛いだろうけどな。」
「そうっすね。痛いんだろうなぁ。」
「しかし、エサが問題だな。」
「何でも食っちゃいますよ。最強っすから。」
「その辺に繋がれてる飼い犬は全滅だ。」
「そうっすね。」
「犬猫はボロ負けだろうね。」
「でももっといいエサが居ますよ。人間。」
「確かに。それだけの大きさだったら敵わないな。」
「間違い無いっすね。」
「しかし、ヤツラは穴を掘らなくなるぞ。」
「何でですか?」
「掘れないだろう。そんなにデカイ穴だと。むしろ掘る必要は無い。人間の住処に住めばいいんだから。」
「じゃあこのビルも占拠されちゃいますね。」
「ドア閉めても余裕で破れるだろうね。なんせ体重の50倍まで持ち上げるくらいだから。」
「やばいっすね。」
「そうだな。人間ヤベェじゃん!」
「全滅っすね。」
「あぁ、多分な。ヤツラの方が数が多いし。タマゴも短期間でボンボン産めるし。」
「一秒に50個産みますよ。ポポポポポポポン!って。」
「それは無い。質量保存の法則を無視すんな。」
「いや、ヤツラはスゴイんすよ!」
「いや、どんなに凄くても自分の質量以上のモノをどうやって産み出すんだよ。」
「常にエサを食ってるんです。」
「現実味が無いからダメ。」
「じゃあ百歩譲って30個!」
「いや、譲らねぇよ。30個でも充分に無理。」
「いや、やばいんですって!ヤツラの繁殖力は。ナメてもらっちゃ困りますよ有也さん。」
「いや、ナメてんのはオマエだから!有り得ないもんは有り得ないの!おまえの願望で質量を無視するな!」
「じゃあそこは普通でいいっす。」
「いや、どうあっても普通だから。おまえのさじ加減で決めるな。」
「まぁどっちにしろ人間は滅びますね。」
「そうだな。そうなる前に俺らがどうにかしないとな。」
「そうっすね。どうやったら勝てるんだろう。」
「銃とか常に持ち歩くしかないか。」
「腹食い破られるの嫌っすね。」
「痛いだろうな。」
「相当痛いっすよ。」
「ヤツラは時速18kmで近付いて来て一気に足をバツンと食いちぎれるわけだからな。」
「絶対勝てないっすね。」
「いや、位置的には腹の辺りにアゴが来る計算になるか。」
「真っ二つっすね。」
「一発だ。」
「即死っすね。」
「どうやって助かろうか。うーん…。」
「うーん…。」
キーンコーンカーンコーン
「戻るか。」
「そうっすね。」
2004/07/06
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