俺のたわごと

ま、たわいのないことばっか書いてますけど暇なら見てね。
日々の考え事、昔の事などが書いてあります。

 269   小鳥を飼ってたんだ。
 
昔、我が家では小鳥を飼っていた。
 
ウチに手乗り文鳥が飛んできてね。
名前はピーちゃんと名付けたんだ。
 
鳥を飼うのは初めてだった我が家でピーちゃんはたちまち人気者になった。
何より、手乗り文鳥というのが可愛くてしょうがない。
 
 
それからしばらくのち…。
 
そう、あれは暑い日の事だった。
我が家に馴染んだピーちゃん。
 
その日はウチの兄貴がエサをあげる時に手に乗せて遊んでたんだ。
よく慣れているピーちゃんはその日も兄貴の指に乗り、手の平からエサをついばんでいた。
 
その時だった。
ピーちゃんが兄貴の手から離れ、窓の方に飛んでいった。
 
その時、兄貴は気付いていなかったんだ。
窓が全開だった事に。
 
ピーちゃんは大空に飛んで行ったとさ。
ファーラウェーイ
 
 
そしてその時、有也が帰ってきた。
 
有也は呆然と窓の外を見る兄貴に向かってこう言った。
「あれ?何してんの?」
 
彼は答えられなかった。
 
「あれ?ピーちゃんは…?」
有也は兄貴の前に置いてある鳥カゴを見てこう言った。
 
彼は遠くを見ながらこう呟いた。
「有也…アイツはもう一人前だ…。ヤツは遠い空に巣立って行ったんだ…。」
 
「オイ、テメェ!逃がしたろ!」
「ち、違うんだ!窓が開いてて…。」
 
「クソボケが!」
「あぁ!?なんだとテメェ!」
 
こうして、ピーちゃんは思い出の空に消えていったとさ。
 
デメタシデメタシ。
 
 
 
そして、我が家には空っぽの鳥カゴが残った。
このままじゃ勿体無い、という事で近所のペットショップでつがいの十姉妹を買ってきた。
 
その2羽は大層仲が悪く、タマゴを産んでも温めずにいた。
 
オスはメスの代わりに温める事もせず。
むしろエサを独占。
 
メスもタマゴよりもエサ。
全く温めようとしなかった。
タマゴは全部で5個生まれ、全て孵らなかった。
やがてオスが死に、続いてメスが死んだ。
 
「鳥はダメだ・・・」
 
それが小学校時代の小鳥の思い出。
 
 
 
高校になってから兄貴がまた鳥が飼いたいと言い出した。
 
「十姉妹の仲の良いヤツを買ってくる。」
今度は失敗しないように仲の良さそうなヤツを買ってきた。
 
2羽の仲は良かった。
何も問題無く過ごしていた。
あとはタマゴが生まれるのを楽しみに待つばかり。
 
そんなある日の事。
高校3年の有也は駅前ロータリーで溜まっていた。
いつものように仲間と溜まってタバコ吸いながら日向ぼっこをしていた。
 
そこへバイト仲間のユッキー(仮名)がお母さんの車に乗って通り掛った。
ユッキーは有也に気付き、声を掛けて来た。
 
「あ、有也くん!」
「おう、ユッキーじゃん。何してんの〜?」
 
「あのさぁ、誰か鳥飼ってくれる人居ないかなぁ?」
「え?鳥?」
 
「うん。小鳥。ウチに飛んで来たの。」
「そうなんだ〜。」
 
「おまえらの中で誰か欲しいヤツ居るか?」
有也は仲間に聞いた。
 
仲間はこう答えた。
「いや〜ウチは鳥飼ってないからなぁ。」
「鳥かご無いしなぁ。」
みんな気の無い返事だ。
 
気を取り直して有也はユッキーに聞いた。
「それってどんな鳥よ?」
 
「なんかよくわかんないの。十姉妹っぽいんだけど。ちょっと違うかも。」
「ふーん。」
 
「今ここにいるの。」
「え?見して!」
 
見ると灰色っぽい十姉妹のような姿の鳥が居た。
 
「見た事無い鳥だなぁ…。」
「でしょ〜。私もわかんないんだよね。」
 
その時、俺は自分の家で十姉妹を飼っているのを思い出した。
ほとんど世話などしていなかったため、ド忘れしていたのだ。
 
「あ、そういやウチ十姉妹飼ってるんだ。ウチで飼うよ。」
「あ、そうなの?じゃあお願いできる?」
 
「ユッキーの頼みだもん。OKでしょ。」
「ホント〜?ありがと〜。」
 
こうして我が家の鳥かごに新しい仲間が入った。
 
 
それから数週間後。
十姉妹のオスの様子がおかしくなった。
 
なぜかエサを食おうとしない。
鳴く事も少なくなった。
 
「なんかこの鳥が入ってきてから、カゴの中が険悪になったような・・・」
兄貴はそう呟いた。
 
しかし、思い過ごしだろうと思っていた。
 
それからしばらくして、十姉妹のオスが死んだ。
死因不明。
エサも水も欠かしてはいなかった。
 
それから数週間後。
十姉妹のメスがタマゴを産んだ。
 
「…種類違うのに。」
「この鳥の子供を身篭ったのか…?」
 
メスも以前のオスと同様にエサを食わなくなっていた。
やがて、飢えて死んでいった。
タマゴも孵らぬまま。
 
そしてその鳥もその数ヵ月後に死んだ。
こいつは寿命のような気がするが。
 
 
兄貴と俺はこの鳥の正体を調べる事にした。
「ウチの図鑑集を調べれば載ってるハズだ。探そう!」
 
かくして、その鳥の種類はたやすくわかった。
図鑑に載っていた名前は【キンカチョウ】
 
「十姉妹じゃないジャン・・・」
「あぁ、そうだな・・・」
 
俺たちにはうっすら予感がしていた。
嫌な予感が。
 
図鑑の最後の解説ページでその鳥の説明を読んだ。
予感は的中した…。
 
『この鳥は攻撃性が強いので他の鳥と飼うのは避けること。』
 
見つめ合う兄貴と有也。
もはや後の祭り。
 
「ヤツは鳥殺しの鳥!」
 
ようやくつがいの十姉妹が死んだ理由がわかった。
キンカチョウは他の2羽を攻撃し、エサを与えなかったのだ。
 
つまり、2羽の死因は飢死。
 
 
それ以来、ウチで鳥を飼う事はしないようにした。
 
もし、キミの家に知らない鳥が飛んできたら、鳥カゴに入れる前によ〜く調べよう。
俺らの二の舞を演じる事のないように。
 
 
2004/09/17


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