彼は卑怯だ。
私の『好き』を利用して、自分の都合に合わせる事を間接的に強制する。
「ズルイ。」
私がそう声を漏らすと、彼は私の目を見ずに振り返る。
「何が?」
何を言ってるんだかわからない、といった表情を浮かべる。
ホントは全部わかってるくせに、わからないような顔をする。
「私の気持ちがわかってて…卑怯だよ。」
「じゃあ、もう会うの辞めようか。」
彼は眉一つ動かさずに言った。
私がここで「ウン。」と言ったら、彼は本当にその通りにするだろう。
そして、それを決めたのが私という形にするんだ。
そもそも、私が「ウン。」って言えないのがわかってるはずなのに。
そこまでわかっててやるから、ホントに卑怯だ。
だけど、私はどうしようもなくこの人が好きで、
二度と会えなくなったらどうしていいかわからない。
ホントは気が狂いそうになるくらい好き。
だけど、そこまで出すと重く思われるのもわかってる。
だから今日も彼の余興に付き合う。
「会えなくなるのは嫌…。」
そう言うと彼はいつも通りの満足気な表情で笑う。
憎らしいアタシの好きな人。
残酷なサディスティックと全てを覆い尽くす優しさを持ってる人。
殺したいくらい愛してるの。
気付いてる?
今日も私は貴方に抱かれながら泣く。
「どうして泣いてんだ?」と心配もしてないくせに言うあなたに、
「一緒にいられるのが嬉しくて。」なんてウソまでついて。
世界一の愛しさと世界一の辛さをくれてありがとう。
あなたに出会えて良かった。
いつかちゃんと殺してね。
冷たい言葉でトドメを刺してね。
2007/12/15
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