あるところに小夜という娘がいた。
とても美しく、男にも大層な人気であったそうな。
小夜は自分が美しいのをよく知っていた。
それを鼻にかけ、1人の男に決めず、ふしだらに遊ぶ日々。
小夜は色んな男から贈り物を受け、これを当然と思っていた。
「私は美人に生まれたの。これを利用しなきゃ損でしょう。」
やがて、小夜は金持ちの旦那と夫婦になった。
玉の輿に乗った小夜は贅沢な日々を過ごす事になった。
晩年になると小夜も皺が増え、衰えてきた。
しかし、小夜は若かりし頃の自分を鼻にかけていた。
旦那は自分が心の醜い女を選んだ事を後悔していた。
「若く美しく心の醜い女は、晩年に心の醜い老婆になるのだ。」
その鬱憤は若く美しい女に向き、浮気を繰り返した。
そのうちに浮気が発覚し、小夜は恐ろしい顔付きで旦那を責めた。
「あんたは最低の旦那よ!後先を考えないバカよ!」
旦那は言った。
「あぁ、違いない。なぜなら、最低の女を嫁に選んでしまった。」
あるところに千代という娘がいた。
とても醜く、男共にもブスとののしられていたそうな。
千代は自分が醜いのをよく知っていた。
それを気にして、あまり表に出ず、慎ましやかに暮らす日々。
千代には男っ気がなく、それを当然と思っていた。
「私はブスだもの。男に選ばれるはずがないわ。」
やがて、千代は1人の青年と夫婦になった。
始めはからかわれているのかと思ったが、彼は誠実だった。
晩年になるまで千代は自分を選んでくれた夫に尽くす日々。
千代はいつも笑顔を絶やさぬ老婆になった。
旦那は心の美しい女を嫁に選んだ事を誇りに思っていた。
子宝にも恵まれ、幸せな老後を送っていた。
千代は旦那に言った。
「あなた、私なんかを選んでくれてありがとうございます。」
旦那は言った。
「何を言うんだ。私は最高の妻を選んだんだよ。」
美しいがゆえに劣等感を持たず、努力を怠る。
醜いがゆえに劣等感を持ち、努力を続ける。
美しいけれど劣等感を持ち、ますます美しくなる。
醜いゆえに劣等感が強まり、ますます醜くなる。
人には様々な生き方があります。
あなたの晩年はいかがなものでしょうか。
俺は劣等感を持たず、才能は磨きたく、豪快な人物になりたい。
身内を守るために悪を知り、悪を退ける力を身につけたい。
愛する家族に囲まれて、感謝の気持ちを表して最期を迎えたい。
そうなるためには、今の自分が成すべき事が何なのか。
それが人生の道標になっているように思います。
皆様の人生にも幸多からん事を。
2009/04/18
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