さて、120cmビーチボールを持って俺は砂浜まで来た。
「浮かれた夏に乾杯」な気分だった。
それぐらい浮かれてた。
「行くぞぉ!それっ!」俺が打った球は風に激しく流され、
店次長のKくんへ目がけて打ったが大分逸れた。
そしてKくんはそれを海の方へ返した。
そしてみんなで波打ち際に取りに走った。
ここまでは良かった。ここまでは良かったんだ。
風は陸から海に向かって吹いていた。
それが命取りとなった。
ビーチボールのサイズは直径120センチ。
当然、風の影響も通常の数倍受けるわけで・・・。
ヤツは速かった。
俺も水泳を10年やってた人間だ。
普通の人よりは全然泳げる。
だが風に乗ったヤツは想像以上に速かった。
一度や二度追いついても水に濡れたヤツの体は恐ろしいほど滑り、まるで掴めない。
マジでやばい。
俺はこのまま追いかけても無駄なんじゃないかと思った。
するとボールのちょっと沖にはサーファーの兄ちゃんがいた。
俺はそのサーファーに「そのボール取って下さい!」と叫んだ。
サーファーの兄ちゃんはボールに触れる事が出来た。
しかし、ヤツはツルツル滑る。
サーファーの兄ちゃんは掴む事が出来なかった。
「あぁ・・・。」俺はもうダメだ、と悟った。
いや、実は少し前から悟ってたんだけど。(笑)
そしてサーファーの「もうああなっちゃったらダメだ。帰ってこないね。」という声に、
俺は力なくこう答えた。
「寂しいけどしょうがないっすよ・・・。へへへ・・・。」
そして振り返って砂浜を見ると、みんなが笑い転げていた。
特にオーナーが。(笑)
みんな腹がよじれるくらい笑ってた。
専務は「有也、あそこにまだ見えるぞ!ほら、点みたいになっとる!」と言って笑った。
俺はイジけた顔をしながら「楽しんでいただけましたか?」と言った。
ちょっぴり涙が出た。(笑)
そしてこう言った。
「ワーン!まだ5分も遊んでないのにー!K君がふざけて海に放るからだぞー!」
するとK君は、
「ゴメンよ有也。アイスおごってやるから。あ、ホラ。フランクフルトも売ってるぞ。」
と、エサでごまかそうとしていた。
「そんなんでごまかそうとしても無駄だぞ。あ、小さくなった。でもまだ見える。ワーン。」
俺がしょぼくれているとオーナーがこう言った。
「有也、遊んでた時間よりも膨らましてた時間の方が長かったな。」
それを聞いて俺も笑った。
「オーナー、かわいそうな俺にビールをおごって下さい。」
初日の昼間はこんな感じだった。
次回に続く。→
2003/08/01
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