さて、夜になって宴会が始まった。
かなり豪勢な飯だった。
俺らにはラーメンでも十分なのに。
オーナーには本当に頭が上がらないよ。
さて、そのオーナーが一気ゲームを始めたからもう大変。
「この焼酎、一気で一本開けたヤツには1万円やるよ。」とかね。
急性アル中の恐れは無いほどのつわもの達が集まっていたが、
みんな、「夜になって遊べないのは損だ。」と考え、率先して名乗り出るものはいなかった。
そう。金に目がくらんだ一部の馬鹿を除いては。
それに名乗り出、見事に全部飲み切ったリュウジは1時間後、1階のトイレで寝てる所を発見された。
あのとき俺が「あれ?リュウジは?」と言わなかったら、彼は朝まで寝ていたと思われる。
そしてみんなも部屋に入り、夜中の12時を過ぎた頃、俺らは密かに枕投げを始めた。
最初は部屋にいるメンツ5、6人だけでやっていたのだが、
「俺らだけでやってもつまんねぇだろ。」ということになり、
他の部屋に襲撃に行く事になった。
俺たちは全員、覆面をする事にした。
タオルをグルグル巻きにして完全に顔を隠し、髪の色でもバレないように頭にもタオルを巻いた。
そして全員がホテルの浴衣を着て、誰が誰か完全にわからなくした。
襲撃のターゲットは彼女を連れて来て二人部屋に泊まっているアツシだった。
まずはそーっとドアノブを回して、鍵がかかってるかを確かめた。
しめた。鍵は開いている。
聞き耳を立てると、どうやらベッドの上にいるらしい。
俺はここで「こんな夜中にプロレスごっこか。めでてー。」とジョークをかました。
クスクス。声を殺してみんなが笑う。
「バカ、笑うなって。しまった、気付かれたか?」
慌ててドアを閉める。
「みんな、声を殺して。今度は笑いとか一切無しで行くぞ。」
「おう。入ってすぐに取り囲む。んで、とりあえず枕でボコる。」
「部屋が暗いけど今ので大体の配置はわかったな。」
「暗い中でマクラでボコる。お先マックラって感じやね。」
などと話していると、突然ドアが開いた。
ガチャ。
アツシと俺らの目が合う。
「・・・誰だおまえら?何してんだ?」
たまらず後ろから誰かがマクラで殴る。
「・・・行け!」小声で誰かが叫ぶ。
声を出したら誰だかバレてしまう。
みんなでボコってそのままダッシュで階段まで逃げた。
階段で待機しているとホテルの従業員がやってきて、
「お客様。今、走られましたか?」
覆面集団にそのホテルマンは丁寧にそう言った。
「・・・はい。うるさかったですか?」
「他のお客様もお休みになられてますので・・・。」
「わかりました。スイマセン。」
こうしてマクラ投げは終わった。
伊豆急の従業員さん、あの時はスイマセンでした。
ある意味、あんな変装グッズを置いておく伊豆急も悪いがな。
そして投げやすいマクラも。
あの状況ではマクラ投げをやらない方がどうかしてるぜ。
おかげで楽しめたよ。
次回へ続く→
2003/08/01
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