最初は西遊記っぽい話だったんだけどなあ。
仲間と一緒に天竺を目指していて俺は説法をしてた。
「汝、欲望に飲まるるなかれ。」みたいな感じで。
でも場面がいきなり変わって豪華な屋敷になったんだ。
仲間は一人に減っていた。
その仲間は「ここが俺の実家だ。」と言った。
彼はここの主人、つまり父親に会うつもりらしい。
「親父を説得して金を援助してもらうよ。
その金で俺は上手い事儲けて暮らすんだ。
自分が如何にして楽に安泰に暮らすか。
それだけしか俺は考えてこなかった。
今までも、そしてこれからもそうだ。」
「ろくでもねえ信念を持ってやがる。」
俺は彼のセリフを聞いてそう思った。
しばらくすると執事が来た。
「おぼっちゃま。懐かしゅうございます。
まもなく旦那様がお見えになります。」
彼の父親が来た。
彼は息子の話を聞くなりため息をついた。
「お前にやる金など無い。
オマエとはもう縁を切ったんだ。
もうこの家には戻ってくるな。」
そう言うと彼の父は立ち去っていった。
「くそぉ。親父の奴俺を認めてくれねえ・・・。」
彼はそうボヤいた。
「そりゃあそうだろうな・・・。」
俺は心の中で思った。
その直後だった。
とてつもない物音とともに彼の父の叫び声が聞こえてきた。
いわゆる死を感じた恐怖の叫びと言おうか。
「うわぁぁぁああ!!」
「何事だ!」とっさに俺達は身構えた。
一瞬で壁もろともドアが吹っ飛び、
得体の知れない化け物が飛び込んできた。
ケルベロスみたいな青くバカでかい犬は俺達を狙っている。
次の瞬間ケルベロスは目に映らないほどの速さで「移動」した。
恐ろしいほどの速さの「移動」は肉体の脆い人間にとってはそのまま「攻撃」になった。
一瞬で仲間と執事が砕け散った。
俺は一応、法力が使える設定だった。(いつのまにか)
最初は法力を持つ三蔵だったからね。
使えるのは頭でわかっていた。
しかしこんな化け物に効く訳が無い。
自分の能力を疑ってしまうと能力はゼロになる。
お約束の「夢ルール」の適用だ。
俺は逃げた。
追いつかれるだろう。
殺されるだろう。
そう思った。
「でも平気なんじゃないか?」
とも思ってしまった。
何故か?それは俺の哲学なのだが、
「俺に見えている世界」は「俺だけの世界」なのであり、
「俺が死ぬ」という事は「世界が滅ぶ」という事なのだ。
わかりやすく言うと俺に見られている事で
奴もまたこの世に存在する事が出来るという事だ。
俺にとっては、
俺の世界が滅ぶ=何者も存在しなくなる
なのである。
つまり俺が「死ぬ=奴も死ぬ」である。
一瞬でもそう思うと不思議と怖くはなくなった。
その瞬間、夢も覚めた。
強かったなあ。アイツ。
今度は倒すぜ。
追記
夢の中での「俺が死ねば世界が死ぬ」という哲学は
現実世界でも思っている事だ。
しかしどこかでそうではないんだろうとも思っている。
だから俺はこの世界に子供を残したい。
俺が死に滅びても俺のDNAは生き残る。
俺のDNAが世界を見届けていく。
だから俺の血は絶やしたくない。
できれば不老不死にもなりたい。
人より長い寿命も欲しい。
それができないのならせめてこの世界に俺が生きた証を残そう。
それが俺にとっての子孫という存在である。
将来、俺の子孫が同じ事を考えてくれればいいなあ。
俺はここに生きたぜ。
いつでもその事を覚えておいてくれ。
俺の分身よ。
そう子孫に言い残したい。
2002/12/28
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