ゆうながウチに遊びに来るという設定だった。
俺は家で待っている事にした。
家は今の新宿のマンションではなく、2003年12月まで実家だったトコだった。
いや、間取りは多少違うのだが。
ゆうなから電話が掛かってきた。
「ゴメン。ちょっと遅くなる〜。」
「あぁ、わかった。」
居間では兄貴と妹がメシを食っていた。
「彼女、遅いなぁ。もう来ないんじゃないの?イヒヒ。」
兄貴が憎らしい顔で笑う。
「いや、ちょっと遅れるだけだっての。」
俺は不機嫌にそう答えた。
しばらくすると家には誰も居なくなった。
俺は部屋の片付けをしていた。
そして部屋を暗くして出かけようとした時、ドアの向こうに人の気配がした。
ガチャッとドアが開いて誰かが玄関に入ってきたようだった。
ゆうなが来たのかな?と思っていたが男の声が聞こえた。
「スイマセ〜ン、読売新聞なんですけどぉ〜。」
新聞配達の兄ちゃんが勝手に玄関に入ってきたようだ。
イライラしていた俺はその兄ちゃんの方を見ずにこう言い放った。
「オイ、テメェ。なんで勝手に人の家に上がってんだよ。」
新聞配達員は何も言わずに出て行った。
しかし、すぐにそいつは戻ってきた。
「あの〜3ヶ月分だけでいいんで〜。何とかなりませんかねぇ〜?」
「アァ?だから勝手に入ってくんなって…。」
俺はその時に初めて新聞配達の兄ちゃんの顔を見た。
彼は俺が高校3年生の時によくつるんでた後輩だった。
「アレ?ジュンちゃんじゃねぇ?」
「あ、有也くん!お久しぶりっす。」
「なんだ〜ジュンちゃん、新聞配達なんかやってんのか〜。」
「そうなんすよ〜。」
「う〜ん、ジュンちゃんが言うなら取ってやりたいが金が無いんだよねぇ…。」
「あぁ〜そうっすかぁ…。」
「あ、日経新聞って扱ってる?」
「あ〜ちょっとやってないですねぇ。」
「そっか〜残念。」
「あ、いえ。いいんすよ。じゃあ失礼します。」
「ゴメンな、ジュンちゃん。頑張ってな。」
俺は再び部屋に戻った。
するとケータイが鳴っていた。
ゆうなから着信だった。
俺は怒りを表現するためにわざと終了ボタンを連打して切った。
電話はすぐにまた掛かってきた。
ゆうなは13時に来ると言っていたのにもう既に19時。
こうやって電話が来るという事はもっと待たせるつもりなんだろう。
俺は不機嫌に電話に出た。
「なんだよ。」
「もうちょっと遅くなるかも。ゴホンゴホン」
ゆうなはちょっとカゼ声だった。
「もういいよ、来なくて。」
「えぇ〜?なんで〜?」
「13時に来るって言ったのにもう19時だ。これ以上待たされんのはゴメンだ。」
「うぅ…ゴメンナサイ。」
「もういいから。今日は来るな。風邪治せ。」
そう言って俺は電話を切った。
俺は再び部屋を片付け始めた。
しばらくするとゆうなからメールが来た。
『お詫びにこんなモノをご用意しました。』
メールにはコンビニで買ったお詫びの品ラインナップが書いてあった。
アイスだとかケーキだとか…モノで釣る気のようだ。
そしてそういったモノとは別に『お詫び料・・・1000円』と書かれていた。
あいつ…アイスとかだけじゃなく金で解決する気なのか…。
これで許しちゃったら俺が金目当てで許したみたいじゃねぇか。
イジワル言ったけど最終的には許すつもりだったのに。
その時、風呂場のドアが勝手に閉まった。
俺は不審に思って風呂場のドアに近づいた。
すると、ドアは少し開いてまた閉まった。
『ひょっとして、ゆうなは既にウチに来てたのか?』
俺はそう考えた。
そしてメールを見た時の俺の反応を風呂場のドアの隙間から見てたのか。
なるほど、オチャメなお嬢ちゃんだぜ。
俺はニコニコしながら風呂場に近づいていった。
すると、ドアが開いて中から知らない男が出てきた。
そいつは何食わぬ顔でスタスタとベランダに向かって歩いていった。
「はぁ?誰だオメェ。」
俺がそいつに言うと、そいつはチラッとこっちを向いてから逃げ出した。
そいつはベランダの柵を越えて向かいのマンションに飛び移った。
すると、向かいのマンションの一室から20歳前後のガキどもがバカ騒ぎしていた。
「イェ〜!」
「テメェ!人の家に勝手に入りやがって!不法侵入だぞコノヤロウ!」
俺は怒ってケータイを向けた。
そしてビデオモードでヤツラのバカ面を撮ってやった。
これで逃げられても顔が割れてる。
「オマエら、覚悟しとけよ!全員マッポに捕まるといいよ。」
「そんな怒るなよ〜ただのノリじゃ〜ん。」
「そうだよ〜。ハッハ〜。」
ヤツらは全く悪びれる事も無く、そう言った。
これだからアホサークルのアホ大学生ってのはタチが悪い。
頭の中がカラッポで飲み会の事しか考えてやがらねぇ。
あ〜直接ぶっ飛ばしてやりてぇ。
そこで目が覚めた。
起きると時間は10時。
今日はゆうなと11時に東中野駅で待ち合わせだ。
でも、この時間でまだゆうなからの連絡が無い。
ゆうなに待たされるのは正夢になりそうだ。
2005/11/12
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