夢の話


管理人・有也の見た夢のコラム。
夢は潜在意識の表れだというが・・・変な夢ばっか。

 62   毒の島。
 
ある所に島があった。
その島は毒素が蔓延し、島中の人々は息絶えつつあった。
 
島のそこかしこには毒素にやられた島民の死体が転がっていた。
このまま原因が掴めなければ調査に来た俺たちも危ない。
 
 
俺はその辺を歩いて回った。
途中、小さな土山を越える時にぬかるんだ土に手を付いてしまった。
『あ〜ぁ。手が汚れたじゃないか。』
 
この辺には廃墟となった建物と小川くらいしかない。
すぐにその辺を周り終えてしまった。
 
「汚染された土壌はそことそこと…それぞれ高い数値が出ていますね。」
科学班がそう言って何箇所か指を差した。
 
…さっき俺が手を付いた土壌に近い。
俺の手は汚染されてしまっただろうか。
 
「じゃあ重機で掘り返して埋めればいいんじゃねぇの?」
「それは良いアイデアかもしれませんね。」
 
毒素があるのは表面だけなのでショベルカーなどの重機で埋めていけば、なんとかなると思った。
重機班は順調にそれを進めていった。
 
 
しかし、原因はまだ掴めていない。
毒素は何が原因で発生するものなんだろうか。
 
「こっちは重機が入れませんね。」
土山が邪魔で重機が入っていけない場所があった。
確かに重機がそこを通ったら乗り上げて倒れてしまうだろう。
 
俺はスコップを手にとって、その土山を切り崩し始めた。
霧雨がサーッと降ってきた。
 
 
「しかし、なんなんだろうな。原因は。」
「あ!こっち、裏から周れば重機も通れるんじゃねぇの?」
 
「あぁ、そうかもしれないな。そうしよう。」
「よ〜し、裏を回って来い。」
 
ガラガラガラガラ
 
戦車のキャタピラ音が周囲に鳴り響く。
いつの間にか重機は戦車になっていた。
 
「あの塀を壊せば川の水が来るはずだ。」
「よし、それじゃ塀を壊そうか。」
 
毒素のある地帯の横には塀があった。
その塀を壊す計画が話し合われていた。
 
「オーライ。オーライ。」
「鬼さんこちら。」
「戦車なんか怖くないぞ〜。」
 
その一方で戦車の行く手を先導していた連中がふざけ始めた。
戦車を誘導していたのが、いつの間にかふざけた煽りになっていた。
 
俺はふざけて戦車の【エアガン乱射ボタン】を押した。
すると、すさまじい量の弾が出て、先導隊に当たった。
『タタタタタ』とかいうレベルの音じゃなかった。
『ブシャァ〜』という音で大量に出た。
 
「イタタタタタタ!」
「痛い!痛い!」
 
「あっはっは。オマエらがふざけるからだ。」
「ついでに塀も壊しちゃいましょうか。」
 
「よーし、ポチッとな!」
 
戦車の砲塔を塀に向け、スイッチを押した。
 
ズドーン!
塀は一瞬にして吹っ飛んだ。
 
「わ〜!水が〜!」
「おわ〜!」
 
塀に空いた穴から水が大量に入ってきて、塀の横にいた先導隊は流された。
水の流れは物凄く速いが、足が付くくらいの深さしかないので溺れる心配は無かった。
周囲は瞬く間に水浸しになった。
 
 
「これで毒素も流れて土壌がキレイになったろう。」
「そうですね。」
 
その時、白骨化した死体の横を線の様な形の足跡が通り過ぎていった。
『なんだ?今のは。』
俺はゾッとした。
 
姿は見えないが、この辺に何かが居る。
自らの姿を消すことが出来る、線のように細い悪魔の類か?
 
その悪魔のようなヤツがこの辺りに住み着いていて、
そいつが発する毒素が土壌を汚染し、人々がその毒素で死んでいったのか?
 
周りの人間も『足跡』に気付き始めた。
廃墟の天井を歩いて行く『足跡』―。
動きを止めた次の瞬間に物凄い速さで走っていった。
 
『速い!あれではヤツを捕まえることなど不可能かもしれない。』
俺は言い知れぬ恐怖を感じた。
 
 
しかし、いつまで経ってもその『足跡』は俺たちに危害を及ぼす事は無かった。
天井を歩いたり、すぐ横を歩いたり。
何にしても透明なので俺たちには見えない。
 
そこで俺は考えた。
『沼に入っておびき寄せよう。』
 
仲間達も沼に入っていった。
「ここに住む線状の生き物も入ってくればいいのに。」
 
ひょっとすると、この悪魔は俺達が久々の客で嬉しいのかもしれない。
この島の住人が全滅してから既に何年も経っている。
久々の客である俺たちと遊ぼうとしているのではないだろうか。
だから沼に入って呼べば同じように沼に入る可能性も高いような気がしたのだ。
 
案の定、『足跡』は沼に入ってきた。
そこで俺たちは一斉に水を浴びせかけた。
 
するとヤツの姿が見えた。
幼い少女の姿をしている。
 
その少女の姿をした悪魔は冷気を発し始めた。
辺りがひんやりとしてきた。
 
科学班が叫んだ。
「その悪魔の種族名がわかりました!氷を操るブッカブーです!」
 
【ブッカブー bucca-boo】
コーンウォール地方に伝わる妖精で、白のブッカブーと黒のブッカブーが存在。
白は豊漁の神で人々に幸せをもたらすが、黒は邪悪で人に危害を及ぼす。
 
 
毒素を出して島民を全滅させた犯人はコイツだったのか。
 
 
ヤツは天井を走って屋根に逃げて行こうとした。
俺はその瞬間にヤツの足を掴んだ。
 
「熱い…。」
ブッカブーは暑さに力を奪われていっていた。
いつの間にか空は晴れて太陽が照り付けていたのだ。
 
ブッカブーは俺を振り払って廃墟の中に逃げ込もうとした。
しかし、俺の身体はビクともしなかった。
 
ブッカブーは屋根の上に居るから見えなかったろうが、
俺の足は下で仲間達がしっかりと支えていたのだ。
 
「有也〜!俺達が支えてる!絶対にそいつの足を離すんじゃねぇぞ〜!」
「そのまま太陽に当ててヤツを倒せ〜!」
 
みんなが俺の足を必死で支えてくれていた。
 
「俺には大事な仲間がいっぱいいるんだ。だからオマエなんかに負けやしねぇぞ!」
「ナカ…マ…。」
 
ブッカブーはだんだん弱っていった。
 
「私もみんなと仲良くしたかった…。なのにみんな死んでいったの…。」
 
ブッカブーの毒素はわざと出したものではなかったというのか。
だとしたら、この子は…。
 
「今度、生まれてきたら…私にも仲間…できるかなぁ…。」
「ブッカブー…。」
 
ブッカブーは太陽の熱で蒸発し、消えてしまった。
 
「お〜い、どうした有也〜。やったのか〜?」
「足、放すぞ〜。いいか〜?」
 
下に降りた時、俺は涙でボロボロになっていた。
あの子が不憫に思えた。
 
 
 
そこで目が覚めた。
 
 
俺はハダカでタオルケットも掛けずに寝ていた。
身体は少し冷えていた。
 
冷気の正体はコレだったのか。
 
しかし、ハダカで寝たおかげで久々にちゃんとしたストーリーの夢が見れた。
ハダカで寝てみるもんだ。
 
 
2006/05/11



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