俺は突然の声に驚き、とっさに叫んだ。
「誰だオマエは!」
すぐに声は返ってきた。
『そんな事は知らなくて良いんだよ。どうせ会う事は無いから。』
「ここに閉じ込めたのはオマエか?」
『そうだよ。』
「身代金目当てなら残念だったな。俺にはそれを金を払ってくれる家族なんかいねぇんだ。」
『金なんて求めてないよ。』
「じゃあ目的はなんだ。」
『そのうちわかると思うよ。』
「クソ、勝手にしろ。」
『そうさせてもらうよ。』
声が消えた途端に照明が消え、耳が痛くなるほどの静寂に包まれた。
「あー、あー。」
音が全く無いのが不快で俺は声を出した。
ずっと声を出してるわけにもいかず、パンパンと手を叩いて反響させてみたり、鼻歌を歌ったりもぞもぞと寝返りをうったりした。
しばらくそんな事をしていると、また例の『声』が来た。
『音が無いのはイヤだったかい?』
「あぁ、何か音をくれ。」
『わかったよ。それじゃ水の音をあげよう。』
「水の音?」
『雨垂れ、川のせせらぎ、波の音だよ。』
「なんでもいいからくれ。」
『ちょっと待っててくれ。』
しばらくすると雨音とポチャリと雫が垂れる音が聞こえて来た。
俺は少しだけ安心してそのまま寝てしまった。
更新日:2006/09/09
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