俺のたわごと

ま、たわいのないことばっか書いてますけど暇なら見てね。
日々の考え事、昔の事などが書いてあります。

 332   俺の面接
 
 
俺が今の会社に就職する事を考えた時期はかなり遅く、11月くらいだったと思います。
 
俺は6月くらいに一社だけ採用試験を受けて落ち、
「あ〜もう面倒クセェ。」ってなってそれ以降は一切受けておらず、
髪の毛も茶色いまま気が付くと11月になってました。
 
焦りは全然無かったです。
「どうにかなるだろ。俺は運だけは自信があるんだ」とかほざいてました。
 
そんな時、担任の先生が俺に今の会社を薦めてきたのでした。
俺は「まぁなんでもいいや」って気持ちと、
「先生も俺が決まらないと困るだろうな」って気持ちと、
「そろそろバカな事も言ってられねぇか」って気持ちがあり、
「じゃあそこ受けてみますよ」と先生に言いました。
 
 
そして数日後、会社の管理部の方が俺のためだけに学校に来て下さいました。
いわば、俺一人のためにプチ会社説明会です。
めっちゃ申し訳無く思いました。
とりあえず、「本日はわざわざありがとうございます。」と言っときました。
 
その人は素敵な笑顔でこう言いました。
「いえ、来て下さってありがとうございます。私、このような者です。」
彼は俺に名刺を差し出した。
 
俺は名刺なんて持ち合わせておらず、
『家に帰ればホスト時代の名刺があるけどいる?』とは言えませんでした。
 
「じゃ、座って話しましょうか。」
その人は笑顔で椅子に座り、持ってきたパンフで説明をしてくれました。
 
 
仕事の内容を聞いてすぐに気に入りました。
パソコン周辺機器の運用・保守という仕事。
カスタマーサービスってんですかねぇ。
「なるほど、それは面白そうだな」って感じで聞いてました。
 
正直、机の前にくぎづけのプログラマーにはなれないと思っていたし、
やっぱり接客が多少あった方が良いと思ってたのです。
 
そして何より大きい会社なのです。
今までに求人案内で見て来た会社とは規模が違うのです。
 
ちなみに説明を受けた後に担任の先生や校長も
『あそこは絶対に潰れねぇよ。頑張れ〜。』と言ってました。
色んな手当てや保養施設もいっぱいで最高。
 
しかし、俺に与えられているのは採用試験を受ける権利だけ。
入りたくても入れるのかどうかも微妙なわけです。
 
とりあえず、「是非、採用試験を受けさせて下さい。」とお願いしました。
 
 
後日、俺は本社に入社試験を受けに行きました。
 
まずはSPIテスト。
言語も数理もIQだけが自慢の俺には屁みたいなもんです。
SPIだけは全国の上位5%に入る自信があります。
なので、ココは余裕でクリア。
 
 
次に面接が行われました。
面接官は3人でした。
真ん中に白髪のおっちゃん、右に堅そうなメガネの人、左に冷たそうな人という構成でした。
 
筆記試験が余裕な俺にとって、一番の問題は面接でした。
俺にとって水商売の経験は切っても切れない部分。
高校卒業後の6年間は何をしてたかは絶対に聞かれるだろうな、と思ってました。
 
 
案の定、聞かれました。
「高校をご卒業なさってから大分、経ちますね。その間は何を?」
 
俺はすぐに答えました。
「接客業を6年やってました。」
 
思いっきりウソぶっこいてます。
そのうち半年はヒモで半年はプーです。
 
面接官の一人がブッ込んできました。
「それはどういったお仕事でしょう?」
 
俺はすぐに答えました。
「私の知り合いの方で店を数軒持ってる方がいまして、その方のお手伝いをしてました。
 喫茶店やバーのようなスタイルの所もありました。そこでずっと働いてました。」
 
 
いいえ、こんなの真っ赤なウソです。
実際はパブのボーイから始めてホストになり、ヤクザのオーナーに憧れ、
キャバの主任をやり、フィリピンパブの店長を経験して、
ヒモ生活を3ヶ月ほど送ってから専門学校に来ました。
 
女が横に座って接客をする喫茶店なんか無いよ。
バーのようなスタイルってのは女しか来ない店なのかオイ。
 
これを言った直後、『薄々、水商売だと勘付かれるかな。』と心配しました。
それだけで引いちゃうのが普通の人だろうし、ましてやこの会社は優良企業。
水商売上がりは採用しないだろうなぁ、なんて思ってました。
 
 
すると面接官の一人がこんな質問を出してきました。
「あなたはその仕事で何を学びましたか?」
 
俺は「う〜ん。」とゆっくり考える素振りを見せながら脳みそをフル回転させました。
『なんて鋭いツッコミをするんだアンタ。鬼かマジで。
 俺が水商売で習ったモノと言えば、
 【他人の話を親身になって聞いてるフリをする裏技】や、
 【口で言い負かして人を言いなりにする裏技】や
 【筋を通すフリをして自分の意見を強引に通す裏技】など。
 とてもじゃないが大声で人に言えたもんじゃないものばかりなんですけど!』
 
しかし、ここで頭脳明晰な有也くんはソッコーで言いました。
「そうですね。僕は主任みたいな役職を任されていたのですが、
 人に何かを頼んだりする時に言い方一つで相手の受け取り方は変わる、
 という事を学びました。
 ぶっきらぼうに『これやって』と言うよりも、
 『悪いけどコレやってもらっていいかな?』という言い方をした方が
 お互いに気持ち良く仕事が出来るという事に気付いてからは
 仕事がやりやすくなりました。」
 
ちなみにこの話は、キャバクラの役職になった時に必ず訪れる問題である、
『厄介な口うるさい女を気分良く働かせる方法』について議論した時に
親友のSaityが言ってたセリフです。
 
実際は、
『あのお客さんのトコ、付きたくな〜い』
とかダルい言葉をほざくクソアマを丸め込むために使ってたものです。
 
まぁ接客業だけでなく、対人関係においても重要なんじゃねぇかって事で言ってみました。
 
 
すると面接官のおっちゃんは満面の笑顔で、
「そうですか〜。それは良い経験をなさいましたね。」と言って下さいました。
なんとなく、水商売をやってた自分が褒められたようで嬉しかったです。
それと同時に『真実を知ったら落とされるだろうな』という思いがよぎりました。
 
 
そして面接は和やかに進み、
「最後に何か質問したい事はありますか?」と言われました。
 
ココで俺は一ヶ月前から温めていた質問を繰り出しました。
 
「う〜ん、それではこの会社で働いてきて一番嬉しかった事と辛かった事を教えて下さい。」
 
これに面接官3人は意表を突かれたらしく、
「ハッハッハ。う〜ん、なんだろなぁ。」と笑ってました。
そして、おっちゃんは右上を見ながら(人は昔の記憶を思い出す時に右上を見る)、
「嬉しかった事はやっぱりお客さんに感謝された事だね。」と言いました。
 
「では、一番辛かった事は?」と聞くと、
「もう忘れちゃったよ。この年になるとその時に辛かった事も
 今では笑い話で辛い事だったと思わないからね。」と笑顔で言っていました。
 
他の二人も答えてくれました。
しかし、おっちゃんと同じ様な内容だったので割愛します。
 
俺がこの質問を選んだ意図は『面接官が昔を懐かしむ表情を見るため』です。
面接をしている時に懐かしい過去の出来事を思い出させる。
それによって「俺も色々あったなぁ。」などと昔を振り返ってもらいたかったのです。
そしてそうする原因を作った俺を「いいなぁ、コイツ」と思って欲しかったのです。
 
我ながら良い作戦だぜ。
しかも結構効いてやがる。
しめしめ。
 
そう思っているとおっちゃんは、
「これであなたの質問の答えになったでしょうか?」と聞いてきた。
「えぇ、聞けて良かったです。ありがとうございました。」と笑顔で言いました。
 
その瞬間、心の中で『勝った』と笑いました。
 
 
それから一週間後、授業中に担任の先生が俺に言いました。
「おぉ、そういやオマエ受かったってよ。」
 
「へ?何の話っスか?」
俺はサッパリ何の事やらでした。
 
「会社。受かったって管理部の人から連絡があったよ。通知、行ってないか?」
担任の先生が言うには、自宅に採用通知が届いてるはずだとの事。
 
俺はオカンに電話して「ポストに採用通知が来てないかい?」と聞きました。
オカンは「あ、あったよ!開けていいの?」と言い、
【採用】の文字を見て電話越しに喜びの声を上げていました。
 
ちなみに倍率は10倍だったそうです。
1000人中100人採用だそうで。
 
 
 
これで俺の面接についての話は終わりです。
今後、就職活動をする人の参考には一切ならないでしょうが、
まぁ一例としてお読み頂ければ光栄です。
 
口だけで世の中を渡ってきた有也でした。
 
 
2005/04/21


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