これは俺のたわごと371:『変なお母さん』400:『変なお母さん。2』の続きのお話です。
まだ読んでない人は先に読んで来やがれブタ野郎。
あらすじ。
17歳の新年二日。
彼はウキウキしていた。
今日は彼女と初詣に行くのだ。
大学受験で忙しく、デートはホントに久々だった。
最近、忙しくてすれ違い始めた二人。
今日のデートでそれをどうにかしたいと願うが…。
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「行って来ま〜す!」
長めのマフラーを首に巻き、彼は家を飛び出した。
目的の神社に着くと、出店の屋台から美味しそうな匂いが漂ってきた。
タコ焼き、あんず飴、お好み焼き、カルビ串、お面、わた飴…。
たくさんの屋台で神社は賑わっていた。
「タックン。」
声がする方を見ると、神社の鳥居の下で彼女が手を振っていた。
「ひ、久しぶり。ゴメンな、待たせた?」
「う、ううん、今来たトコ。」
「そっか…。良かった。」
シーン…
会話が続かない。
「アタシも、今来たトコ。」
「オカン!なんでココに居るんだよ!」
「わっ!おばさん!」
彼女の肩の後ろから突然オカンの顔が出てきて彼はビックリした。
「おばさん?オバサンじゃないでしょ、チャー子。どうして死に急ぐの?」
「ごっ、ごめんなさい…。」
「オカン、彼女の名前はヒロミ。いい加減に覚えろよ。」
「何が彼女の名前はヒロミ、よ。こないだまでアタシのオッパイに夢中だったくせに。」
「えっ?こない…だ?」
「オカン!それ赤ん坊の頃の話だろ!」
「冗談よ、タク坊。何よ、必死に弁解しちゃって。」
「ったく…。何でココに居るんだよ〜。」
「あら、この屋台は町内会でやってるのよ。知らなかったの?」
「えっ?オカン、町内会の役員だったっけ?」
「ううん。」
「じゃあどうして?」
「言ってみただけよ。」
「何だよもぉ〜!やっぱり邪魔しに来たのかよぉ〜!」
「アタシ、タックンの嬉しそうな声には敏感なのよ。今日は随分と声が弾んでたもんね。
さては小娘に会いに行くんだな、とアタシの妖怪アンテナはピンと来たの。」
「妖怪アンテナってのは世代が違うからイマイチわかんないけど、
俺と彼女の楽しいデートをわざわざ邪魔しに来んなよ〜。」
「どうして?タックン!?」
「どうしてって、彼女と二人で過ごしたいの!俺は!」
「なんでゲゲゲの鬼太郎の妖怪アンテナを知らないのよ!」
「いや、その話題じゃないし!その時代じゃないから見てないし!」
「髪の毛が頭のてっぺんでピーンよ!ピーン!」
「わかった、わかった!」
「わかってくれたのね。じゃあ母さんも一緒に行かせてちょうだい。」
「そっちの話題じゃないし!ピーンの方だよ!」
「何がピーンよ!どこがピーンよ!イヤらしいタックン!」
「もぉ〜!面倒くさいよ〜!」
「行かせてちょうだいとは言ったけどイヤらしい意味じゃないんだから!
アタイを、アタイを安い女だと思わないでちょうだい!」
「わかったわかった。オカンも一緒ね。ハイハイ。」
「あぁ〜。チャー子がイヤそうな顔したぁ〜。」
「えっ?しっ、してませんよっ!」
「ヒロミ、ゴメンな?」
「うっ、ううん。大丈夫。」
「大丈夫ってなんだオイ?」
「あ、いえ。嬉しいデス…。」
「わかればよぉ〜し。」
こうして、オカンも一緒に初詣に行く事になった。
「タックン、アタシィ〜たこ焼き食べたいな☆」
「自分で買えよぉ〜。」
「タックン、私…ちょっと金魚すくいしてくるね…。」
「えっ?あっ、じゃあ俺も行くよ!」
ヒロミの希望により、金魚すくいの屋台に行く3人。
タックンもやる気マンマンで挑んだ。
「あっちにいっぱいいるなぁ〜。俺、あっち側ですくってくるわ!」
タックンは反対側に回った。
「ふ〜ん、金魚すくい…ねぇ…。」
「一緒にやりませんか?」
「チャー子、その金魚、すくってどうするの?」
「えっ…?」
「知ってるわ。アンタ、金魚をすくう気なんて無いんでしょ。」
「どっ、どうしてですかっ。」
「『あ〜ん、タックゥ〜ン。破れちゃった〜。』でしょ?」
「……。」
「その一言をタックンに言うために100円払うの?めでたい小娘ね。」
「…ちっ、違います。」
「それともアレ?その振袖には金魚すくいがカワイイ、とか思ったの?」
「…ちっ、違います。」
「チャー子、アタシの腕を見てて御覧なさい。」
「えっ?」
いつになく真剣な顔のオカン。
【オバ…お母さん、スゴイ眼力だわ。こんなに真剣に…。】
チャー子はオカンをジッと見つめた。
…次の瞬間!
バチャーン!
「キャー!タックゥ〜ン!」
「なっ…。」
オカンは足を滑らせ、水槽に片腕を突っ込んだ。
「濡れちゃったぁ〜。せっかく取ろうと思ったのにぃ〜。」
「もぉ〜何やってんだよ〜。オカンは〜。ほら、ハンカチ。」
「タックンが拭いてくんなきゃイヤ〜。」
「わかったわかった。まったくもう〜。」
「困るよ〜、奥さ〜ん。他の人もやってんだからさぁ〜。」
屋台のおっちゃんも困り顔だった。
「スイマセン、スイマセン。オカン、足を滑らしたみたいで…。」
タックンは屋台のおっちゃんに謝っていた。
「わかった?チャー子。こうやるのよ。」
「え?こうって…。」
「タックンの気を引きたいならコレくらいやりなさい。」
「わっ、私はそんな…。」
「上手くやったらウチの家で二人きりにしてあげるわよ。」
「なっ、何を…。」
「ズブ濡れになれば、ウチで着替える口実も出来るってわけよ。」
「……。」
「アンタの家まではココから電車も使って30分でしょ?ウチは徒歩3分よ。」
「で、でも…。私はそんな…。」
「タックン、大分溜まってるみたいだけどねぇ〜。他の子に行かなきゃいいけど。」
「他の子…。」
「あの子、結構モテるからねぇ〜。あんまりヤらせないのもねぇ〜。」
「やっぱ…モテますよね…。」
「アタシはチャー子の事、ホントは気に入ってるし、仲良くやれそうだなって思ってるの。」
「えっ?ホントですかオバ…お母さん。」
「チャー子のためを思えばこそ、やった方がいいと思うの。」
「でも、水…冷たいですよね…。」
「冷たいわよ。でもアンタはタックンに温めてもらえるじゃない。」
「温め…!」
チャー子の顔が真っ赤になった。
「さ、行きなさい。アタシは消えるわ。」
「あ、あのっ。ありがとうございます!」
オカンはニコッと微笑み、帰って行った。
「ったく…。アレ?オカンは?」
「あ、先に帰ったみたい。」
「あぁ、そうか。」
「あ、アタシ続きやろうかなっ!」
「うん。オカンみたいに滑るなよ〜、ハハッ。」
チャー子…もとい、ヒロミの心臓がドキッと鳴った。
ヒロミは一つ大きく深呼吸し、水槽にわざとつまずいた。
「…キャ、キャー!」
バッシャーン!
「なっ、何やってんだよヒロミ!大丈夫か?」
その時、ビデオカメラ片手にオカンが飛び出てきた。
「アッハッハッハ!この子、マジでやったわ!撮ってやった撮ってやった!」
「おっ、おばさん!…どうしてココに!?」
「タックン、聞いて〜。チャー子ったらね〜。」
「あ〜!あ〜!ちょっ、ちょっと!」
「オカン、帰ったんじゃなかったの?」
「困るんだよ、ホントに〜。」
「スイマセン、ホントにスイマセン!」
タックンは屋台のおっちゃんに謝りはじめた。
「チャー子、アタシィ〜たこ焼き食べたぁ〜い。」
「なっ、何言ってるんですかっ!?」
「さっきのもビデオに撮ってたんだけど、タックンに見せてもいいの?」
「……くっ!最初からそのつもりで…騙したのね!」
「オーホッホッホ!」
「どうしてこんな事するんですか!?」
「ヒマだからよ!」
「そんな…。」
「ハイ、Bダッシュでたこ焼き屋ぁ!」
「ビ、Bダッシュって何ですか?」
「なんでマリオのダッシュを知らないのよ!」
「世代が違うからです!」
「チャー子のくせに生意気な!ビショビショに股間を濡らしてるくせに!変態女!」
「べっ、別に濡らしてるのは股間だけじゃないです!」
「大丈夫か、ヒロミ。…股間だけじゃないってナニが?」
「タックン、チャー子が濡れてるのは股間だけじゃないって叫びだしたのぉ〜。」
「ちょっ!やめてください!」
「さて。タックン、チャー子をウチで着替えさせてあげなさい。」
「えっ…。」
「それと、母さん達はこれから親戚に挨拶回りだから。」
「挨拶回り?それって親父も?」
「そうよ。モチロン。チャー子、二人きりでタックンに温めてもらいなさい。」
「そっ、そんな…。」
「あ。言い忘れた。ミチコロンドンが切れたら、和室のタンスに入ってるから。」
「……。」
「……。」
夜になってオカンからメールが来た。
【チャー子といっぱい話しときなさい。】
オカンは俺とヒロミが最近、すれ違ってたのも知ってたんだろう。
俺はオカンにメールを返信した。
【ありがとう、オカン。】
2006/03/19
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