俺のたわごと

ま、たわいのないことばっか書いてますけど暇なら見てね。
日々の考え事、昔の事などが書いてあります。

 504   初詣の思い出。
 
5、6歳の時だったと思う。
オトンが「みんなで初詣に行こう。」と言い出した。
 
俺はその【ハツモーデ】ってのがよくわからず、
『…Pardon?』とばかりに聞き返した。
「どこ行くの?」
 
オカンから帰って来た答えは聞き慣れた寺の名前だった。
「△△寺よ。」
「△△寺に何しに行くの?」
「お参りしに行くのよ。」
 
なるほど、ハツモーデとやらはよくわからなかったが、先に△△寺に行くんだな。
俺はそう思ってお気に入りのジャンパーに袖を通した。
 
兄貴とふざけ合ってキャッキャとはしゃぎながら歩いて行くと、
商店街の辺りから屋台が出ているのが見えた。
 
「あ!屋台が出てる!」
お好み焼きの香ばしい匂いが鼻に飛び込んできた。
 
当時のお小遣いは学年×100円。
自分の小遣いじゃタコ焼きやわたあめなんて買えなかった。
 
100円を一度に使ってしまうのはバカバカしいという思いもあった。
駄菓子屋でクジを引いたりゲームをした方が有効な気がしたのだ。
どうせなら長く楽しみたいのだ。
 
また、親と一緒だからといって、ねだっても買ってもらえないのが当たり前。
「タコ焼き食べたい!」
それでも言ってみるのは、『言うだけならタダ』の精神があったからだ。
 
すると、オカンが間髪入れずにこう言った。
「後でもっと美味しいの食べるのよ。」
 
この『もっと美味しいの食べる』はクセモノで、
単に今欲しがっているモノから離そうとする甘言の場合があるのだ。
『ウソクセー。テキトーぶっこいてるんじゃないか?』と疑った俺はオカンに聞いてみた。
「ホント?何食べるの?」
「パフェよ。」
「パフェ!?」
 
俺の中で贅沢なオヤツNo.1はチョコレートパフェだった。
パフェはフランス語で『完璧』の意である『Parfait(パルフェ)』が語源であると聞くが、
当時の俺にとってもまさしく完璧なデザートだった。
アイスも生クリームもバナナもチョコレートも乗っているのだから。
 
しかし、どこで食べるんだろう。
俺の頭に思い浮かんでいたのはデパートにあるファミリー向けのレストランだった。
もしかして、新宿の小田急百貨店とかに行くのかな。
 
「パフェ、どこで食べるの?」
「さっき通ったトコよ。」
「えっ?」
 
振り返ったが、よくわからなかった。
ここら辺にファミリー向けのレストランなんてあったっけ?
まぁいいや、後でわかるなら。
 
寺に行くと大勢の人が煙を浴びていた。
「良くなって欲しいトコに煙を浴びるのよ。」
「ふーん。」
「はい、有也もやりなさい。」
「え〜、いいよ。」
 
なんで煙を浴びるのが良いのか、よくわからなかった。
みんな変な事するなぁ。
煙いだけなのに。
 
オカンから五円玉をもらって、手を合わせて目をつぶり、欲しい物を念じた。
ファミコンのソフトが欲しいです。
 
そして、いよいよパフェとご対面だ。
それは2Fにある喫茶店だった。
 
しょっちゅう通ってるのに、この店の存在には気付いていなかった。
こんな店があったんだなぁ。
 
「何にする?チョコレートパフェ?」
「うん。チョコレートにする。」
「俺も。」兄貴もチョコにした。
「私はストロベリー。」妹はストロベリーにした。
 
オトンとオカンが注文をしている間、俺は兄貴と遊び始めた。
しばらくすると、分厚いトーストが運ばれてきた。
 
「なにこれ!分厚いよ!」
生まれて初めて見る4枚スライス食パンにちょっとビックリした。
 
「食べてみる?美味しいのよ。」
「食べる!」
大きく口を開けてガブッとトーストに噛み付くと、
いつも食べてる8枚スライスのトーストとは全く違う味がした。
 
サクッとした感触の後にふんわりした感触があり、
さらに香ばしい匂いが口の中いっぱいに広がる。
これはトーストの新たな領域だ。
 
「美味い!」
「お兄ちゃんも食べる?」
「俺はいいや。」兄貴はこういう時に遠慮する。
「アーも食べたい。」妹は俺が美味そうに食ってると食いたくなる。
 
まもなくパフェが運ばれてきた。
待ってましたとばかりに長いスプーンを器に刺し込む3人。
まずはウエハースをサクサクと食べて、ポッキーを引き抜く。
次に生クリームを全部食べてからアイスを食べ始める。
ここまでが最高に幸せな流れだ。
 
その後は溶け出したアイスと混ざったコーンフレークを片付ける『作業』に入る。
いつもいつも、これはなんだかやっつけ仕事みたいな感覚になってしまう。
 
どうしてサクサクに作ってあるコーンフレークをビチャビチャにするのか。
本当に理解が出来ない。
なんだったらコーンフレークを上にすればいいのに。
それじゃ生クリームとかが出来ないのかな。
そんな事を考えながらパフェを平らげた。
 
オトンが会計をしてる間に俺たちは階段を降り、満足感に浸っていた。
「あの食パン美味しかったね。」
「ちょっと厚いヤツね。」
「ウチでもアレ食べたい。」
「あんまり売ってないのよね。」
 
そんな話をしているとオトンが階段を降りてきた。
「美味しかったか?」
「うん!美味しかった!」
 
家に帰る途中で俺はハッとひらめいた。
『あ、わかった!あの店が【ハツモーデ】って名前なんだ!』
 
そして、家に着いてからオカンにこう言った。
「またハツモーデ行こうね!」
「え?今年はもう行ったじゃない。」
 
1年に1回しか行けないお店なのかな?
ナゾは深まるばかり。
 
 
そして、10歳くらいの時にようやく【ハツモーデ】の意味を知った。
パフェを食べた店の名前が【ルノアール】だと知ったのもその頃だった。
 
 
 
それ以来、俺はルノアールの前を通るたびに、
「あ、ハツモーデだ。」とつぶやいたりする。
 
 
2008/01/05


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