大磯のハンバーガー屋で見たサーファーのDVDは、
サーファーのレジェンド達が当時の事を語る内容だった。
最高の波を探し、その映像を収め、世界に発信する事だけを生きる目的にする男たち。
それだけのために世界中を飛び回って、色んな努力をする。
もう波狂いとしか言いようがない。
「波に乗るためだけにそこまでやるのかよ!」と驚かされた。
あのDVD欲しいなぁ…。
波乗り、レイヴパーティー、LSD、新しい聖地、新しい板の形状、
それだけが彼らの全てだった。
完璧な波と、乗り慣れた西海岸の穏やかな波。
サーフボードの歴史と試行錯誤と流行を作り出すプロたち。
1つのモノに夢中になって、それに固執して、流れを作り上げる。
それは興味の無い人からすれば、バカみたいな事なんだけど、
そういうエネルギーみたいなモノを味わえれば、生き甲斐を感じられる。
広告代理店の人間だとか、芸能人だとか、
雑誌の編集者なんかも同じような感覚があるんじゃないかと思う。
自分たちで流行を作るだとか、文化を作るだとか、そういうエネルギーだ。
流れを作る、ムーブメントを起こす、そういう表現のアレだ。
俺は違う。
流れを作ろうともしてないし、自分の中で沸いた材料を、
自分の好みに合う形で調理して、味見して満足しようとしてるだけだ。
以前、ホスト時代の同僚のトシと仕事についての話をしたりした。
俺は物書きをしていて、トシは中古車屋の社長とデイトレーダー。
お互いに自分の中だけで終始するような仕事だ。
自分だけで終始する仕事をして、満足をして、金も稼げる。
それはそれで良いんだ。
だけど、決定的に何かが欠けてた。
俺らはそれが何であるかもよくわかっていた。
満足感みたいなモノだとか、達成感だとかを味わう仲間だ。
一緒に何かを作り上げて、そこで生まれるエネルギーだ。
それが決定的に欠けていた。
どんなに金を稼げても、どんなに満足の行く仕上がりになっても、
仲間と一緒にそういう喜びを味わう事は出来ない。
俺もトシもそういう感覚を欲していたんだと思う。
ホスト時代、俺らは毎晩のようにバカ騒ぎをして、
俺たちはどこの店よりも面白くあろうと、一気コールやら歌のコールやら、
そういうのをどんどん作って行く事に夢中になっていた。
ウチの店に来ていたお客さんも「ここより面白い店はないわ!」と飲み狂い、
俺らはそういうのを口にはしなかったけど、みんなそういう自負をしていて、
俺らが発信したマイブームみたいなモノが色んなお客さんづてに広まって、
全然違う土地でも俺らの作ったモノが広がってると聞いた時には嬉しかった。
自分たちでそういう流れを作ってるような感覚があった。
興味が無い人からすれば、くだらねぇものだったかもしれないけど、
他店の人たちがウチの様子を見に来たりするのだとか、
ウチのコールをどんどんマネて行く様だとか、「新しいコールないの?」と聞かれたりとか、
そういうのが嬉しかった。
仲間と過ごした黄金の日々は、すげぇくだらなくて、今でも大事な思い出だ。
俺もトシもそういう感覚を味わってしまったがゆえに欲するんだろう。
今さら水商売をやろうとは思わない。
だけど、自分たちでそういう流れを作り出す事はしてみたい。
また黄金の日々を違う形で味わってみたい。
他人が見れば、バカみたいなものだろうけど、
生き甲斐を感じられない人生に満足できなくなってしまったんだ。
きっと、やるんだろうな。
それが出来なきゃ、人生に価値なんてないだろう。
それが出来なきゃ、いつか「飽きたからお先〜」って引き金引くんだろう。
それがわかってるから、俺は何かを待ってるんだと思う。
そのための材料をあれからずっと集めてるんだと思う。
行きたくもない海に行って、ムリヤリ自分を狩りだして、
色んな刺激を受けて、「これじゃねぇの?これはどう?」と聞いてるんだ。
どれもこれも満足してくれない自分に「まだかよ。」って笑ったりもして。
今回、大磯に行って良かった。
サーファーの始祖を見て、その辺がまとまった気がする。
ようやく、これらを言語化する事が出来た。
それを待っていたんだ。
去年、今年と合わせて大磯での道楽に100万円以上は使ってると思う。
だけど、俺の中で100万円の価値はあった。
薄々感じていたけど、来年の俺は大磯に行かないかもしれない。
これを導き出すために行ってたんだと思うから。
頭の中に漠然とあったものがまとまって言語化出来た瞬間、
それまでの自分とは明らかに何かが変わるような気がする。
今の俺が考える事も数年後には変わってるのかもしれない。
もっとダサくなりたがってる部分もあるし、もっと派手にやりたがってる部分もある。
また、自分じゃなくて他人を成功させる事を願っていたりもする。
俺が育てて売れっ子にしたい、みたいな欲求もある。
ホントは成功なんてしなくてもいいのかもしれない。
クソみたいな環境に絶望して、グチを言いながら生きるのも一興かもしれない。
人間はどうせタフだ。
生きる事の苦痛から逃げようとして死にたがる人間は多いが、
実際に心から死にたがる人間はそうそういない。
自然とそう考えられる人はとっくに実行してる。
エレベーターのボタンを押すくらい簡単に降りてる。
どうせ遅かれ早かれ死ぬんだから、面倒でも付き合ってやるべきか。
せっかく、この世に作られたんだから。
夢中になって楽しめる流れを作るのが大事だと気付いた。
これからは何をどのように作るかを考えよう。
2009/09/03
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