生まれて初めて紅茶を飲んだのは幼稚園の年少時代だった。
友達の家に遊びに行った時、友達のお母さんがみんなに振る舞ってくれたのが、
それまで飲んだ事の無い“甘いお茶”だった。
その当時は紅茶というモノの名前も知らなかったし、口にした事も無かった。
ただただ、初めて飲む甘いお茶に驚き感動していた。
それまで俺が飲んでいたお茶といえば、せいぜい麦茶か緑茶。
あれはあれで好きだったけど、お茶なのに甘いというのが当時の俺には何よりも新鮮だった。
帰り際、オカンに「またあの甘いお茶飲みたい」と言ったのを覚えている。
オカンは「あぁ、紅茶ね。ウチにもあるのよ。今度入れてあげる」と言っていた。
とはいえ、ウチには紅茶なんてハイカラなもんはめったに出てこなかった。
せびれば誕生日の時ぐらいは出てきたが、普段からウチの冷蔵庫にあったのは
汽車のマークのポッポ牛乳とヤクルトジョアくらいのもんだった。
そんな環境で育った俺がお茶を普通に飲むようになったのは90年前後だっただろうか。
1985年に伊藤園の『お〜いお茶』、1986年にキリン『午後の紅茶』が登場した。
それまではお茶なんざ、自動販売機で買うようなものじゃなかった。
自動販売機で買うのはジュースと決まっていた。
つぶつぶみかんジュースとか、コーラとか、そんなもんばかりだった。
自宅でお湯を注いで作れるようなお茶や、蛇口をひねれば出てくる水なんかに、
金を払うのはアホらしい、そんな時代だった。
だが、俺は午後の紅茶を飲んだ時に幼稚園の時の感動がよみがえっていた。
「あの時の甘いお茶だ…。」
再び出会えた初恋の女の子。
俺の中で紅茶ってのはそんなイメージだった。
しかし、小学生当時の俺のお小遣いは学年×100円。
自動販売機でジュースを飲むくらいなら、駄菓子屋でガム買ってベビースター食って、
30円ゲームのファミスタをやってる方がマシだった。
そんな俺がジュースを飲めたのは、家族でどこかに出かけた時ぐらいのもんだった。
家族で代々木公園とかに出かけて、オトンが気まぐれに「ジュース飲むか?」と聞いてきた時に飲む程度。
いや、そんな時でもNCAA(サントリーのスポーツドリンク)とかを飲んでたと思う。
NCAAは美味かったなぁ…。再販して欲しい…。
中学2年ぐらいの時、学校でもやたらと午後の紅茶が流行った。
午後の紅茶も最初はストレートティーだけだったが、
後にレモンティーとミルクティーも販売し始めた。
当時の俺はコーヒーの飲み過ぎで胃を痛める事が多く、
たまに保健室で胃薬を飲んだりする変な中坊だった。
「そろそろ、コーヒーさんとの付き合いも考え直さなきゃな…。」
そんな時、俺の目の前に現れたのが午後の紅茶ミルクティー。
彼女はどこまでも完ぺきだった。
俺はそれまでコーヒーに注いでいた情熱をミルクティーに向けた。
コーヒーを飲む機会はほとんどなくなった。
そのぐらい、ミルクティーにのめり込んだのだ。
当時は午後の紅茶の袋入りキャンディーなんかも売りに出始めて、
中学校に持って行って友達に配り、コッソリ授業中に食ったりもした。
B'zのシングル『ZERO』のカップリング曲『恋心』でも、
『彼女はいつもミルクティー』という歌詞があって、
それがB'z好きの仲間内で紅茶ブームみたいなものを加速させていた。
あれから何年経っただろうか。
俺とミルクティーとの付き合いは長い。
今でも、ほぼ毎日のようにミルクティーを飲んでいる。
ただ、飲むラインナップは少しずつ変わってきている。
やはり、基準になっているのが午後の紅茶ミルクティーだ。
午後の紅茶ミルクティーは毎日でも飲める。
しかし、今はもっと美味しいミルクティーがいっぱいある。
現在の順位を付けるとこんなカンジだろうか。
1位 Lipton EXTRA SHOT 深煎ミルク紅茶
2位 午後の紅茶Special 茶葉2倍ミルクティー
3位 Lipton Tea au Lait
4位 Lipton The ROYAL
5位 紅茶花伝 ROYAL MILK TEA
(2009年9月現在)
50歳くらいになったら、俺は他の飲み物に惹かれるのかもしれない。
しかし、糖尿病にでもならない限りはミルクティーを飲み続けるだろう。
今までの人生で思い出は数々あるが、その中にもミルクティーがあった。
あの時も、あの時も。
あぁ、愛しのミルクティー。
なぜこんなにも美味いのか。
2009/09/30
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