ヤツが桃から生まれたってのはどう考えてもおかしい。
前々から納得が行かなかった。
そこで俺は仮説を立ててみた。
まずは桃の形状に着目していただきたい。
桃ってのは尻に似た形をしている。
これはバアさんのケツを指す隠語なのだ。
では何故、桃から生まれたと言い出したのか。
それは桃太郎が年を取ってから出来た子だからだ。
ジイさんかバアさんのどちらかが子供が出来にくい体質で、
若い頃からいくらヤっても出来なかったのだ。
そして、二人は子供を作る事をすっかり諦めていた。
そんなある日、ジイさんが芝刈りついでに山芋を掘って来た。
それを喰ったジイさんは精力が溢れ、久々にバアさんを抱いた。
恐るべきは山芋パワー。
これが危険日バリバリのバアさんにメガヒット。
『子作りは無理』とハナから諦めていた二人は当然、避妊なんかしてない。
まぁその時代にはゴムもマイルーラもあったもんじゃねぇが。
ところがバアさんは子供が出来たと知って動揺した。
「まだまだお盛んですね、と町の連中にからかわれるよ。」
バアさんはそう言ってジイさんに泣きついた。
「何を恥じる事があるんだバアさん。おめでたいじゃないか。」とジイさん。
「嫌だよアタシャ恥ずかしくて人前に出られん。」と恥じるバアさん。
ジイさんはバアさんのお腹をさすりながら考えた。
バアさんは「ハァ…どうしたもんかねぇ…。」と言いながらジイさんに背中を向けた。
その時、ジイさんの視線はバアさんの尻に向けられた。
「こっ、これじゃあぁぁ!!」
ジイさんは若い頃、バアさんの尻を桃に例えていた。
「キミのお尻は桃のようにキレイだ。」が新婚時代の口癖だった。
それを思い出したジイさんは叫んだ。
「桃から生まれたと言えばいい!
決してウソでもないじゃろう。」
ジイさんもバアさんも子供が生まれてから町の連中に桃太郎の事を話した。
町の人の反応は様々で、「桃から産まれた?そりゃたまげたわ〜。」と驚いた者もいれば、
「ありがたや。天からの授かり物だな。」と涙を流して喜んでくれる者もいた。
「生物学的にありえん。」と言った博識な若者は口封じに殺された。
こうして桃太郎は桃から生まれた事になったのであった。
さて、桃から生まれたってのはこれで説明がついた。
しかし、まだ納得行かない点がある。
桃太郎のツレが犬・サル・キジであるという点だ。
種族の壁とか言葉の壁とか一切無視してやがるからね。
これについても仮説を立ててみた。
実は桃太郎はこの三匹を連れて鬼ヶ島には行ってないのだ。
普通に考えていただきたい。
歩いていて出会った犬を一般的に何と呼ぶか。
そう、野犬だ。
桃太郎は野犬に出会い、立ちすくんだのだ。
野犬の恐ろしさは山に入る事が多いジイさんから聞いていた。
ジイさんは野犬に出会った時の対処法を桃太郎にも教えていた。
エサを投げ、それを喰ってる間に逃げるという単純な方法だ。
桃太郎はバアさんに持たされたキビダンゴを野犬に投げ、
それに夢中になってる隙に逃げ出した。
仲間にするどころじゃなかったのだ。
次に桃太郎はサルに出会った。
いや、出会ったのではなく、サルが突然現れたのだ。
野性のサルを思い浮かべていただきたい。
ヤツらは人が手に提げているビニール袋やバッグを狙う事が多い。
さて、思い出していただきたい。
桃太郎がキビダンゴをどこに持っていたかを。
そう、野性のサルの棲息地でお腰に付けたキビダンゴ。
これはもう狙ってくれと言ってるようなものだ。
ハッキリ言ってウカツにも程がある。
赤井風に言わせてもらうと、
サルをナメてもらっちゃ困りますよ。
サルだけはガチで。
さて、腰に付けたキビダンゴをサルに狙われた桃太郎。
それからどうなったのか。
ここでキビダンゴをどのように腰に付けていたのかを解説しておこう。
戦国時代の足軽(歩兵)は握りめし等を葉に包み、
布で巻いて両端を腰の横に結び付けていた。
桃太郎も全く同じだとは言わないが、このような付け方をしていたのだろう。
さて、サルは桃太郎の腰に付けたキビダンゴを執拗に攻撃した。
桃太郎はまたしても立ちすくんでいた。
サルの噛む力は人間の数倍で、逆らったら致命的なダメージを喰らう。
ジイさんにそんな話を聞いていた桃太郎は抵抗出来ずにいた。
しばらくすると布が裂けてキビダンゴがこぼれた。
サルは喜んで拾い、喰い始めた。
桃太郎が拾おうとするとサルに威嚇された。
桃太郎は泣きながら逃げ出した。
サルも仲間にするどころじゃなかったのだ。
次にキジだが、これは見掛けただけだ。
「おや、キジだ。アイツを捕まえて食べよう。」
とは思ったが、キジはすぐに桃太郎の気配に気付き飛んで逃げた。
こうして桃太郎の記憶には色んな動物と出会った思い出がプライスレス。
さて、これを踏まえて話を続けよう。
俺がコラムを書く調子もウリャウリャになってきた事だし。
『鬼ヶ島に行く』と言って村を出てきた桃太郎だったが、
動物達にまでバカにされてすっかり自信を失くしていた。
ぶっちゃけた話、鬼がどのぐらい強いかなんて知らなかったのだ。
村人が鬼の噂をしていたから、退治すると言っただけだった。
自分の強さを過信していた理由はただ一つ。
村にはジジイかババアしか居なかったのだ。
桃太郎はジジイやババアと比べて力が強かっただけなのである。
【井の中の蛙】とはまさにこの事。
しかし、今更引っ込みが付かなくなっていた桃太郎は鬼ヶ島に行くしかなかった。
仕方が無く、船を借りてひたすら鬼ヶ島を目指した。
鬼ヶ島は東京ドームくらいの広さの島だった。
だが鬼ヶ島とは名ばかりで、どこにも鬼のマークとかは無かった。
桃太郎はビビリ腰で物陰に隠れながらあちこちを回ってみる事にした。
だが、鬼はどこにも見当たらない。
しばらくすると、普通の屋敷があった。
桃太郎はゴクリとツバを飲み込んだ。
『ココにヤツらが居るんだ。』
しかし、門の辺りにも人影…もとい、鬼影は無かった。
桃太郎はイチかバチか中に入ってみる事にした。
するとそこら中に人が倒れているではないか。
倒れている男たちはどう見てもならず者だった。
そのうちの一人が呻き声を上げて桃太郎を呼んだ。
「うぅぅ…助けてくれ…流行り病に侵されて…。全員死にそうなんだ…。」
桃太郎はその男に聞いた。
「鬼は!?鬼はどこにいるんです?」
男は答えた。
「あ…あぁ、俺達は鬼じゃねぇ…。
鬼ヶ島って名前を付けたのも…
俺達が鬼って事にしたのも…
全ては…村人から簡単に金品を巻き上げるための…
カシラの…作戦だったんだ…。
も、もうしねぇから医者を呼んでくれ…。」
桃太郎の脳裏に『楽勝』の二文字が浮かんだ。
桃太郎は弱っていた盗賊を皆殺しにし、財宝をぶん取った。
そして村に財宝を持ち帰り、
自分の冒険を思いっきり脚色して村人に聞かせた。
それが現在でも語り継がれている桃太郎の話なのでした。
めでたしめでたし。
おしまい。
2005/04/14
|