何かに憧れ、何かになりきり、常軌を逸した行動を取る。
多感な時期ゆえの妄想から痛い行動に至る、そんな思い出。
少なからず経験があるという人も多いのではないかと思う。
いや、ぶっちゃけそうであって欲しい。
俺は自転車を馬に見立てて「よし、行けっ!」とか言っていた。
多分、頭の中では馬がヒヒーンと言っていたと思う。
頼子の姉ちゃんは魔女の宅急便に憧れてホウキにまたがり意識を集中させていた。
多分、頭の中ではあのシーンの『GOGO!キーキ!』が聞こえていたと思う。
頼子はそれを発見、声を掛けずに『お姉ちゃん頑張れ!』と心の中で念じる。
本当に飛べると思って2人とも10分くらい固まっていたらしい。
ゆうなはナウシカに憧れ、風を読んで空を飛べる予定だったらしい。
雨が降るのは風を読んで予知できたらしい。
そういえば、突然思い出したけど、中学時代に痛い女が居たっけ。
あの子も妄想癖がハンパじゃなさそうだったな。
中学3年の時、同じクラスの嫌われてる女3人がコックリさんをやっていて1人が卒倒。
思いっきり何かが乗り移ったような演技をしてぶっ倒れた。
何かをブツブツ言いながら倒れたような気がする。
周りにいたヤツらは「なにコイツ!超ウゼェ!」と騒ぎ立てていた。
騒ぎに乗り遅れたSaity(同じクラス)が「ナニナニ?」と来たので俺が事情を説明。
Saityは物凄くイヤそうな顔をしながら、「コイツらヤバイだろ…」とドン引きしていた。
俺はSaityの引きっぷりとイヤそうな顔を見て爆笑していた。
「ウザイ」「キモイ」は言われたら辛いだろうと思い、俺は口にしないようにしていた。
『3人のリーダー格であるアズキ(卒倒女)は他の2人にチカラを見せようとしたんだろう。
っていうか、思いっきり頭打ったみたいだけど、そこまで命張って演技するなよ…。』
俺はウザイキモイを口にしない代わりにそう思っていた。
周りのキモイウザイコールは止まらないどころか加速していた。
そのうち、嫌われトリオの1人、ヒジリが止めに入った。
「みんな何でそんなコト言うの?かわいそうでしょ?」
手を広げて通せんぼのジェスチャーをしながら彼女は言った。
それが何とも言えず芝居がかっていて、背筋がゾゾッとしたのを今でも覚えている。
『ヒロイン?オマエはなんかのヒロインになったつもりなのか?』
そう思うと寒くなってちょっと引いた。
俺はヒジリに「それよりアイツ、頭を強く打ってたみたいだけど…?」と言った。
彼女らをキモイと思う気持ちはあったが、さすがに頭打ったらヤバイだろうと思った。
「ええっ?ホント?アズキちゃん!アズキちゃん!大丈夫?」
また彼女の芝居がかった棒読みに近い『セリフ』が始まった。
また背筋がゾワゾワッとむず痒くなった。
必死に友達を心配している優しい女の子の役か。おめでてーな。
アズキはピクリとも動かない。
まさか…打ち所が悪かったのか?
「一応、保健室に連れてってやったら?」と俺は言った。
すると、ヒジリは言った。
「ありがとう、優しいね。あ…ひょっとして…アズキちゃんの事、好きなんでしょう?」
その時ほど、人を殺したくなった事は無かった。
妄想は人に害を与えないレベルで繰り広げていただきたい。
ホウキにまたがるくらいでちょうどいいんだ。
2006/08/29
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