俺が友人とどこかに向かっていると、
元カノのサチがアパートの一室から出てきた。
「有也ぁ。死のうと思うんだけど、殺してくれない?」
生きていても仕方が無い、という口ぶりだった。
「おぉ、いいよ。」
俺は二つ返事でOKした。
「じゃあハイ。」
サチは俺に包丁を手渡してきた。
「これでやんの?」
俺はそれを受け取って、サチの頭を押さえた。
「うん。一気にね。」
「おう。」
首にグッと包丁を突き立てると、
何とも言えない感触が柄まで伝わってきた。
首からは血が溢れ、包丁は刺さったままだった。
俺は自分に返り血が付いていない事を確認した。
サチはまだ意識があった。
表情を変えず、自分の命が消えるのを待っていた。
俺は服の裾で自分が手を付いた下駄箱の指紋を拭き取り、
サチに玄関のカギとチェーンを締めるように指示した。
こうしておけば密室での自殺と処理されるだろう。
「死んじまう前に締めとけ。」
そう言うと、サチは少し笑ってうなずき、手を振った。
「じゃあまたな。」
俺もそう言って手を振った。
バタン
ドアが閉まった瞬間に目が覚めた。
「殺してくれ」と言われて殺す。
これってどの程度の罪になるんだろうか。
ちょっと調べてみよう。
刑法 第二十六章 殺人の罪
第202条(自殺関与及び同意殺人)
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
もし、俺が現実でこれと同じ事をやってバレたら、
懲役三年・執行猶予五年くらい喰らうんだろうな。
ふむ、勉強になった。
2007/08/20
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