赤覆面の男はまだ歩いている。
モニター映像は赤覆面の男を撮り続けている。
赤覆面の男の前に緑色の覆面の男が現れた。
赤覆面の男はナイフを構えた。
緑覆面の男は青竜刀をヒュンヒュンと振り回し、
赤覆面の男に斬りかかっていった。
赤覆面の男はとっさにナイフを投げた。
ナイフは緑覆面の男の喉元に突き刺さった。
緑覆面の男は青竜刀を手から落とし、
自分の首に刺さったナイフを引き抜いた。
途端に首から血が溢れ出し、緑覆面の男はガクリと膝をついた。
またもや廊下は赤く赤く染まっていった。
『いいぞ!赤い覆面の彼は実に見事だ。』
例の『声』は喜んでいた。
『今の彼はナイフを投げるしかなかったんだ。わかるかい?』
「……………。」
俺は黙っていた。
『彼はナイフの達人ではない。だからナイフを投げるのは危険な賭けだったんだ。しかし、彼はすぐに投げた。相手には青竜刀があったからね。まともに戦ったら死ぬだけさ。だから投げるしかなかった。でもその判断はなかなか出来るもんじゃない。失敗は確実に死に繋がるからね。死に対する恐怖に打ち勝ち、相手の一瞬のスキを見極めたんだ。これはスゴイ事だよ。』
例の『声』は興奮しつつ、嬉しそうに解説した。
そしてさらに続けてこう言った。
『緑の男が青竜刀を振り回さなければ、赤い男もナイフを投げる決断はできなかったかもしれないな。脅そうとしたのがアダになったわけだ。実に良い勉強をしたねぇ。』
人が一人死んでるのに気にも留めないなんて…。
既にゲーム感覚なのか。
狂ってやがる。
『キミも頑張ってくれたまえ。』
更新日:2006/09/28
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