クナイの柄の部分に巻かれた布にドス黒い血の跡が付いていた。
「中古品か…。」
『それを手に取って自殺した者もいるよ。』
自殺…。
俺なら絶対に選ばない選択肢だ。
だが、極限状態に陥ったらどうなるかわからないな。
実際、この状況は異常過ぎる。
前のヤツはこの状況に耐えられなかった。
それも仕方が無いのかもしれない。
まともな環境で育ってきた人間なら狂ってしまうだろう。
『キミも自殺するかい?』
「誰がそんな事するか!」
『そりゃ良かった。やる気になってくれたようだね。』
テメェらを殺してやる。
それまでは絶対に生き抜いてやる。
『では、キミに教えておこう。』
「なんだ。」
『一人殺す毎に一千万円だ。』
「なに!?」
『キミへの報酬だよ。』
「一千万…。」
『だから他のヤツも必死になってるんだ。』
「死にたくないだけじゃないのか。」
自分が死にたくないだけなら他の連中も同じこと、それだけなら徒党を組んで暴動を起こす事も考えられる。
だが、金が掛かってるとなれば話は別だ。
『みんな最初はためらうんだ。次に麻痺していく。』
「…………。」
『そして最後に……殺しのエキスパートになる。』
…殺しのプロってわけか。
殺らなきゃ殺られるわけだし、何人も殺してるうちに麻痺もするんだろう。
最初は生きるための唯一の手段だったのが、賞金も貯まってきて欲が出たわけだ。
わかりやすいヤツじゃねぇか。
更新日:2006/10/02
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