翌朝。
男が出掛けた直後にインターホンが鳴った。
少女は男が忘れ物をしたのだと思ってドアを開けた。
「どうしたの〜?」
すると、そこには見知らぬ女性が立っていた。
「・・・アンタがあの人を・・・。」
女性は涙ぐんでいる。
「あの・・・彼はもう出掛けましたよ?」
パシッ!
女性は突然、少女の頬を平手で殴った。
「泥棒女!彼を返してよ!」
殴られた少女は訳がわからない。
「あの、違います。私は・・・。」
取り繕う間もなく、女性は泣きながら走り去った。
少女はそれから夕方までずっとソファーの上で考え込んでいた。
「あの人、彼女なのかなぁ…。」
少女は考えながら眠ってしまった。
目が覚めると男が帰って来ていた。
「あ、おかえりなさい。」
「やっと起きたか。」
「ゴメンね。御飯作ってないの。」
「あぁ、別に頼んでねぇからいいよ。」
「あのね・・・。朝、女の人が訪ねて来たの・・・。」
「そうか。それで?」
「頬を叩かれた。」
「ホントか?大丈夫か?」
「うん。女の人、私を見て何か誤解したみたいだけど・・・。」
「あぁ、多分もう来ないよ。叩かれたのは俺のせいだ。巻き込んで悪かった。」
「・・・あの人、彼女?」
「いや、違うよ。」
「でも、泣いてたし・・・彼を返してって・・・。」
「もう俺には関係無い女だ。・・・この話は止めよう。」
少女は黙るしかなかった。
「一応、弁当を買ってきた。腹が減ったら食え。」
そう言って男は自分の部屋に引っ込もうとした。
「私のせいでケンカになったの?だったら私、すぐ出て行くよ。」
少女は男に向かってそう言った。
「いや、違うよ。俺は面倒な女を切りたかった。そのためにおまえと住む事を言っただけだ。」
「ヒドイ・・・。彼女泣いてたんだよ?」
「愛情と同情は筋違いだ。愛されてないのに一緒に居るのはもっと辛いもんなんだよ。」
少女はそれ以上、何も言う事が出来なかった。
彼の言う事は正しい。
でも彼の言う言葉は悲しい。
少女はベッドに入り、一人で泣いた。
何故か無性に悲しかった。
更新:2004/07/29
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