歌舞伎町ラブストーリー


 3   第3話
 
翌朝。
 
男が出掛けた直後にインターホンが鳴った。
少女は男が忘れ物をしたのだと思ってドアを開けた。
 
「どうしたの〜?」
 
すると、そこには見知らぬ女性が立っていた。
 
「・・・アンタがあの人を・・・。」
女性は涙ぐんでいる。
 
「あの・・・彼はもう出掛けましたよ?」
 
パシッ!
女性は突然、少女の頬を平手で殴った。
「泥棒女!彼を返してよ!」
 
殴られた少女は訳がわからない。
「あの、違います。私は・・・。」
取り繕う間もなく、女性は泣きながら走り去った。
 
 
少女はそれから夕方までずっとソファーの上で考え込んでいた。
「あの人、彼女なのかなぁ…。」
 
少女は考えながら眠ってしまった。
 
 
目が覚めると男が帰って来ていた。
 
「あ、おかえりなさい。」
「やっと起きたか。」
 
「ゴメンね。御飯作ってないの。」
「あぁ、別に頼んでねぇからいいよ。」
 
「あのね・・・。朝、女の人が訪ねて来たの・・・。」
「そうか。それで?」
 
「頬を叩かれた。」
「ホントか?大丈夫か?」
 
「うん。女の人、私を見て何か誤解したみたいだけど・・・。」
「あぁ、多分もう来ないよ。叩かれたのは俺のせいだ。巻き込んで悪かった。」
 
「・・・あの人、彼女?」
「いや、違うよ。」
 
「でも、泣いてたし・・・彼を返してって・・・。」
「もう俺には関係無い女だ。・・・この話は止めよう。」
 
少女は黙るしかなかった。
 
「一応、弁当を買ってきた。腹が減ったら食え。」
そう言って男は自分の部屋に引っ込もうとした。
 
「私のせいでケンカになったの?だったら私、すぐ出て行くよ。」
少女は男に向かってそう言った。
 
「いや、違うよ。俺は面倒な女を切りたかった。そのためにおまえと住む事を言っただけだ。」
「ヒドイ・・・。彼女泣いてたんだよ?」
 
「愛情と同情は筋違いだ。愛されてないのに一緒に居るのはもっと辛いもんなんだよ。」
 
少女はそれ以上、何も言う事が出来なかった。
彼の言う事は正しい。
でも彼の言う言葉は悲しい。
 
 
少女はベッドに入り、一人で泣いた。
何故か無性に悲しかった。
 
 
更新:2004/07/29


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