翌朝。
少女が起きて居間に行くと、テーブルの上にメモがあった。
『今日は夕方まで起こすな』
「夕方まで寝てるのかぁ・・・。アタシも仕事探してこよう。」
いつまでもココに置いといてもらうわけにはいかない。
男は最初に会った時、こう言った。
「バイトを探して金を貯めろ。自分で部屋を持てるようになったら出て行けばいい。」
少女は着替えて家を出た。
まずは本屋に行ってアルバイト情報誌を買った。
公園でブランコに座りながらそれを読んだ。
自分でも出来そうなバイトの載っているページに折り目を付けていった。
「18歳になれば住み込みの仕事とかもあるのに・・・。」
自分の若さがはがゆかった。
少女が求人雑誌を見ている間に辺りは少しずつ暗くなり、夕方になっていた。
そこに男が通りかかった。
「おぉ、何してんだ?」
少女が声のする方を振り返ると男がスーツを着て立っていた。
「あ、お仕事?」
「あぁ、行って来る。今日は鍵を閉めておけよ。」
男はいつもと違う感じのスーツを着ていた。
目にはカラーコンタクト。
腕には高そうな時計。
首には金のネックレス。
ネクタイもどこかのブランドの物だった。
「ねぇ、何のお仕事してるの?」
そう聞いて少女は自分がこの男の事を全く知らない事に気が付いた。
「そういえば名前も聞いてないよね。」
「ずっと一緒に居るわけじゃない。必要無いだろ。じゃあな。」
男は少女の問いには答えずに去って行った。
少女は少し寂しい気持ちになった。
家に帰り、部屋に籠って少女は色々と考えた。
私、何を勘違いしてるんだろう。彼女でも何でもないのに。
でもあの人の事が知りたい。
これだけお世話になってるのに名前も知らないなんて。
少女の考え事は夜まで続いた。
気が付くと夜の10時を回っていた。
少女はお腹が空いたので何か食べる事にした。
冷凍庫を開けるとレトルトのパスタやドリアが入っていた。
「あ、コレ食べよう。」
少女はパスタを取り出した。
冷凍庫の扉を閉めようとした時、奥の方に英字新聞の包みが見えた。
「なんだろう・・・。」
少女は気になってその包みを取り出した。
新聞の包みを開けると中から小さな箱が出てきた。
「指輪・・・?」
少女が箱を開けると中には青く輝く宝石の付いた指輪が入っていた。
手にとって見ると、リングの裏には文字が彫ってあった。
【2000.9.7 I'm the one for you】
少女の胸がドクンと鳴った。
更新:2004/07/31
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