男は朝方になって帰ってきた。
少女はソファーで寝息を立てている。
「こんなトコで寝ちまったのか。」
男はスーツの上着を脱いで少女に掛けた。
「お父さん・・・。」
少女が寝言を言った。
男は少女の頭を優しく撫で、自室に入った。
「チッ、まだ酔いが残ってやがる。弱くなったもんだ。」
クラつく視界に男は舌打ちしてベッドに倒れこんだ。
意識が朦朧とした頃にケータイが鳴り響いた。
「・・・誰だ、こんな時間に。」
男はしぶしぶ電話に出た。
「もしもし?」
電話の向こうでは女の泣き声が聞こえる。
「おまえか・・・。子守歌にしちゃ良くねぇ響きだぜ。」
「・・・あんな若い子に入れ込んでるの?もう私に飽きたの?」
「・・・似てんだ。」
「えっ?」
「いや、何でもねぇ。寝るから切るわ。」
「待ってよ!」
「また今度にしてくれ。おまえもそんなにしつこい女じゃねぇはずだろう。」
「しつこい女なの!でもそういうの出したら嫌われるってわかってるから・・・。」
「あぁ、嫌いだよ。」
「だから私、必死で今まで【出来た女】をやって来たでしょう?」
「俺はそうやって必死に【自分を作る女】の方がもっと嫌いなんだよ。」
「そんな・・・。」
「言いたい事はそんだけか?」
「・・・ヤダ!切らないで!」
「じゃあまた今夜。店で続きを聞くよ。もう寝たいんだ。」
「・・・ゴメンなさい。」
「あぁ。」
ピッ
「やっと寝れる・・・。」
男はそのまま眠りについた。
夕方、男の目が覚めると少女は居なかった。
テーブルを見るとメモがあった。
【バイト探しに行って来ます。ゴハン作っておいたので気が向いたら食べて下さい。】
キッチンに行くと鍋にスープらしきモノが作ってあり、その横にもメモがあった。
【クッパです。温めてゴハンにかけて食べてね。お酒飲み過ぎないように!】
「ハハッ。そんなに酒の匂いが残ってたか。」
男は苦笑いして鍋を火に掛けた。
男はクッパを食べた後、スーツに着替えてメモを書いた。
【クッパ美味かった。】
メモをテーブルの上に置き、男は出掛けた。
更新:2004/08/12
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