歌舞伎町ラブストーリー


 5   第5話
 
男は朝方になって帰ってきた。
少女はソファーで寝息を立てている。
 
「こんなトコで寝ちまったのか。」
男はスーツの上着を脱いで少女に掛けた。
 
「お父さん・・・。」
少女が寝言を言った。
 
男は少女の頭を優しく撫で、自室に入った。
 
「チッ、まだ酔いが残ってやがる。弱くなったもんだ。」
クラつく視界に男は舌打ちしてベッドに倒れこんだ。
 
 
意識が朦朧とした頃にケータイが鳴り響いた。
 
「・・・誰だ、こんな時間に。」
男はしぶしぶ電話に出た。
 
「もしもし?」
 
電話の向こうでは女の泣き声が聞こえる。
 
「おまえか・・・。子守歌にしちゃ良くねぇ響きだぜ。」
「・・・あんな若い子に入れ込んでるの?もう私に飽きたの?」
 
「・・・似てんだ。」
「えっ?」
 
「いや、何でもねぇ。寝るから切るわ。」
「待ってよ!」
 
「また今度にしてくれ。おまえもそんなにしつこい女じゃねぇはずだろう。」
「しつこい女なの!でもそういうの出したら嫌われるってわかってるから・・・。」
 
「あぁ、嫌いだよ。」
「だから私、必死で今まで【出来た女】をやって来たでしょう?」
 
「俺はそうやって必死に【自分を作る女】の方がもっと嫌いなんだよ。」
「そんな・・・。」
 
「言いたい事はそんだけか?」
「・・・ヤダ!切らないで!」
 
「じゃあまた今夜。店で続きを聞くよ。もう寝たいんだ。」
「・・・ゴメンなさい。」
 
「あぁ。」
 
ピッ
 
「やっと寝れる・・・。」
男はそのまま眠りについた。
 
 
夕方、男の目が覚めると少女は居なかった。
テーブルを見るとメモがあった。
 
【バイト探しに行って来ます。ゴハン作っておいたので気が向いたら食べて下さい。】
 
 
キッチンに行くと鍋にスープらしきモノが作ってあり、その横にもメモがあった。
 
【クッパです。温めてゴハンにかけて食べてね。お酒飲み過ぎないように!】
 
「ハハッ。そんなに酒の匂いが残ってたか。」
男は苦笑いして鍋を火に掛けた。
 
 
男はクッパを食べた後、スーツに着替えてメモを書いた。
 
 
【クッパ美味かった。】
 
 
メモをテーブルの上に置き、男は出掛けた。
 
 
更新:2004/08/12


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