歌舞伎町ラブストーリー


 6   第6話
 
少女は面接に来ていた。
前日にバイト募集の雑誌でチェックした所に電話をしたのだ。
 
『明日の夕方4時半に面接に来てくれ。』
人事担当と名乗る男にそう言われて少女はビルの一室に来ていた。
受付の女性に応接室に通され、そこで待つように言われた。
 
仕事内容は【テレフォンアポイントメント】と記載されていた。
某大手清掃用品メーカーのハウスクリーニング勧誘が仕事らしい。
募集条件に年齢制限が特に記載されていないのでココに電話したのだ。
 
「どうもこんにちは〜。」
しばらくすると一人の男が部屋に入ってきた。
 
「はっ、初めまして。」
「あっはっは。緊張しなくてもいいよ。どうぞ座って。」
 
言われるままに少女はソファーに腰を降ろした。
 
「さて、まず履歴書を見せてもらおうかな。」
「あっ、ハイ。これです。」
 
「うん。じゃあ拝見しますね。ふむふむ・・・ん?」
 
人事の男は履歴書を見るなり表情を曇らせた。
 
「キミ、17歳なの?高校生?」
「はい・・・。あの、17歳じゃダメですか?」
 
「う〜ん、基本的には18歳以上って事になってるんだよね。」
「あ、そうなんですか・・・。スミマセン。募集条件には特に書いてなかったので・・・。」
 
「17歳じゃあちょっとねぇ・・・。」
「本当にスミマセン。お時間割いて頂いて。じゃあ失礼します。」
 
少女は一礼して部屋を出ようとした。
すると男は少女の腕を掴んできた。
 
「まぁまぁ、そう焦らないで。僕がなんとかしようと思えば出来るよ。」
「え、ホントですか?」
 
男は舐めるような視線で少女の体を見てこう言った。
「うん。キミがちょっと僕の相手をしてくれればね。」
 
そう言うなり、男は少女の胸を触ってきた。
少女はすぐに男の腕を振りほどこうと腕を掴んだ。
 
「イヤっ、やめて下さい!」
「いいじゃないか。キミだってバイトしてお金が欲しいんだろう?
 ほんの少しキミが相手してくれれば時給も1200円からにしてあげるよ。」
 
お金は確かに必要だ。
いつまでも彼の世話になるわけにはいかない。
一瞬、少女は迷った。
 
「悪くない条件だろう?ねぇ、ちょっとだけなんだからさぁ。」
 
男の息が荒くなり、少女の首筋に生暖かい風が吹いてきた。
少女はその時、母親の再婚相手に乱暴されそうになった時の事を思い出した。
 
「イヤぁぁぁ!」
 
少女は男を突き飛ばし、すぐにドアを開けて逃げた。
 
 
家の近くの公園に着くと、少女はベンチに座った。
途端に震えが来た。
今頃になって怖くなってきたのだ。
 
「うっ、うっ・・・。」
 
少女はしばらくそこで泣いた後、家に帰る事にした。
 
 
家に着くと鍵が掛かっていた。
男はもう仕事に出掛けたらしい。
 
鍵を開けて中に入り、居間のテーブルを見るとメモがあった。
 
 
【クッパ美味かった。】
 
 
少女はホッとしてまた泣いた。
 
 
更新:2004/08/19


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