歌舞伎町ラブストーリー


 8   第8話
 
翌日。
少女の目が覚めたのは昼だった。
 
ひとしきり泣いた後、居間のソファーで寝てしまったようだ。
クーラーが付けっぱなしで身体が冷えきっていた。
 
男はまだ帰っていないらしい。
一人だと思うと少女は少し寂しくなった。
 
バイトを探さなくてはいけない。
だが、また昨日の様な事があったらと思うと怖かった。
 
「こんな事じゃ一生、一人で生きて行けない・・・。
 いつまでも誰かに迷惑かけてちゃダメだ。
 でも・・・またあんな事があったらどうしよう・・・。」
 
その時、玄関の方からガチャガチャと音がした。
少女は突然の物音に一瞬、体をビクつかせたが、すぐに男が帰って来たのだとわかった。
 
少女は涙を拭いて笑顔で出迎えた。
「おかえりなさい。」
 
男は少女の顔を見てその目が少し腫れている事に気が付いた。
「…何かあったのか?」
 
「何も無いよ?どうして?」
「目が腫れてる。泣いてたんだろ。」
 
「何でもない。」
「いいから言え。」
 
男の目は拒否させない目だった。
 
 
少女は昨日の出来事を話した。
 
少女の話が終わった時、男は少女の腕を掴んでこう言った。
「行くぞ。」
 
 
20分後。
二人は昨日のビルの前に居た。
 
「ここだな?」
男の言葉に少女は無言で頷いた。
 
男は無表情のまま、ドアを蹴り飛ばした。
勢いよくドアが開いて壁に当たり、『バン』という衝撃音が響いた。
 
男は受け付け嬢に落ち着いた声でこう言った。
「バイトの面接担当の男を呼べ。」
受け付けの女性はオロオロするばかりだった。
 
「早くしろ。」
男は受け付け嬢を見据えてそう言った。
 
「あ、あの・・・お約束の無い方は・・・。」
受け付け嬢は必死で職務を全うしようとしている。
 
 
男は受付嬢の言葉を無視し、中に入って行った。
少女も男の後に続いた。
 
 
更新:2006/10/21


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