翌日。
少女の目が覚めたのは昼だった。
ひとしきり泣いた後、居間のソファーで寝てしまったようだ。
クーラーが付けっぱなしで身体が冷えきっていた。
男はまだ帰っていないらしい。
一人だと思うと少女は少し寂しくなった。
バイトを探さなくてはいけない。
だが、また昨日の様な事があったらと思うと怖かった。
「こんな事じゃ一生、一人で生きて行けない・・・。
いつまでも誰かに迷惑かけてちゃダメだ。
でも・・・またあんな事があったらどうしよう・・・。」
その時、玄関の方からガチャガチャと音がした。
少女は突然の物音に一瞬、体をビクつかせたが、すぐに男が帰って来たのだとわかった。
少女は涙を拭いて笑顔で出迎えた。
「おかえりなさい。」
男は少女の顔を見てその目が少し腫れている事に気が付いた。
「…何かあったのか?」
「何も無いよ?どうして?」
「目が腫れてる。泣いてたんだろ。」
「何でもない。」
「いいから言え。」
男の目は拒否させない目だった。
少女は昨日の出来事を話した。
少女の話が終わった時、男は少女の腕を掴んでこう言った。
「行くぞ。」
20分後。
二人は昨日のビルの前に居た。
「ここだな?」
男の言葉に少女は無言で頷いた。
男は無表情のまま、ドアを蹴り飛ばした。
勢いよくドアが開いて壁に当たり、『バン』という衝撃音が響いた。
男は受け付け嬢に落ち着いた声でこう言った。
「バイトの面接担当の男を呼べ。」
受け付けの女性はオロオロするばかりだった。
「早くしろ。」
男は受け付け嬢を見据えてそう言った。
「あ、あの・・・お約束の無い方は・・・。」
受け付け嬢は必死で職務を全うしようとしている。
男は受付嬢の言葉を無視し、中に入って行った。
少女も男の後に続いた。
更新:2006/10/21
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