狭いフロアは部屋数も限られていた。
【人事・経理部】と書かれた札は容易に見つかった。
男がドアを開けると中には7人の社員が居た。
「昨日、バイトの面接を担当した男はどいつだ?」
男の言葉に反応し、社員の数人がある中年オヤジを振り返って見た。
そのオヤジは状況を察したのか、表情をこわばらせた。
「・・・おまえか。」
男は無表情のまま、そのオヤジの髪の毛を引っ掴んだ。
オヤジは小刻みに震えていた。
「あいつに何をしようとした?自分の口で言え。」
「ひっ!スイマセン!わ、私は・・・。」
「何をしようとした?」
「スイマセンでした!どうか…どうか警察にだけは…。」
その瞬間、男はオヤジの体を壁に叩きつけた。
そして男はオヤジの腹を2発殴りつけた。
「グッ!ゴホッゴホッ!」
オヤジは床に這いつくばった。
「あいつに何をしようとした?」
男は這いつくばるオヤジの髪の毛を掴み、再び聞いた。
「わ、私はあの子の身体を触りました!」
オヤジは半泣きになり、白状した。
「クズが!」
男は机に置いてあったボールペンをオヤジの手の甲に突き刺した。
部屋中にオヤジの叫び声が響いた。
「黙れ。」
男はオヤジの口の中に靴のつま先をねじ込んだ。
ウウッ、とオヤジがうめき声を上げた。
「この程度で叫んでんじゃねぇ。テメェの痛みなんぞどうでもいい。あいつに謝れ。」
男は再び髪の毛を引っ掴み、オヤジの顔をムリヤリ少女に向けた。
「謝れ!」
「スイマセンでした!どうか!どうか警察には!」
「救えねぇなテメェ。この期に及んでまだ我が身の心配か。」
男はオヤジの腹を蹴り飛ばした。
「帰るぞ。」
腹を抱えてうずくまるオヤジを尻目に男は少女にそう促した。
帰り道で男は少女にこう言った。
「悪かった。」
少女は不思議そうに男を見た。
「どうして謝るの?」
「おまえが心細いと感じてる時に一人にして悪かった。」
男は少女の顔を見ることも無く、宙に向かってにそう呟いた。
少女にはそれが自分に対しての言葉ではないように思えた。
更新:2006/10/28
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