Love at once


 89   お客さんじゃない
 
「あ、あの…私たち…。」
私はパニクって口ごもった。
 
「俺が見たコトないって事は新規のお客様だよね?俺、ケンジって言います。ヨロシク!」
彼は嬉しそうにそう言った。
 
「私たち、京也さんに会いに来たの。彼は居ますか?」
ミッコがハッキリとした口調でそう言った。
 
「あ、京也さん指名なんですか?ええ、来てますよ。」
彼はそう言ってドアに手を掛けた。
 
「あ、待って!私はお客さんじゃないの!」
私は声を振り絞って彼に言った。
 
「え?お客さんじゃない?あ、じゃあ呼んで来ます?」
彼はにこやかに言った。
 
「私…私…。」
そこからは声が出せなかった。
どうしたらいいのかわからなくなって涙が溢れてきた。
 
「京也さんに彼女が退院して来たって言って下さい。」
ミッコはマジメな顔をして彼に言った。
 
「退院?う〜ん、わっかりました。そう言えばわかるんすよね?」
彼はちょっと不思議そうな顔をしてそう言った。
 
「それでわかるはずなの。お願いします。」
ミッコは私の肩を抱きながらそう言った。
 
「OKで〜す。」
彼はそう言って店の中に入っていった。
ドアが一瞬だけ開いて店の中から大音量の音楽が聴こえた。
 
 
更新:2005/03/28


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