Love at once


 90   『会えない』
 
「彼、呼んできてくれるって。久しぶりに会うのに泣いてたらダメだよ。」
ミッコはそう言いながら私の背中をポンポンと叩いた。
 
しばらくすると店のドアが開いた。
さっきのケンジくんだった。
 
「スイマセン。会えないそうです。」
彼は申し訳無さそうにそう言った。
 
「なんで?」
ミッコは彼に問いただした。
 
「理由は聞いてません。ただ、会えないと伝えてくれって言われました。」
彼はうつむいてそう言った。
 
「もういいよ、ミッコ。ありがとう、ケンジくん。ゴメンね。」
私はそう言って駅に向かって走った。
 
後ろからミッコの声が聞こえた。
「ちょっと!待ってよ!」
私はそれでも立ち止まらなかった。
 
泣きながら走っていると色んな人が私を見ていた。
私は口元を押さえながらひたすら夜の繁華街を走った。
 
 
更新:2005/03/30


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