俺のたわごと

ま、たわいのないことばっか書いてますけど暇なら見てね。
日々の考え事、昔の事などが書いてあります。

 237   黒ヒゲ危機一髪。
 
ホストといえば女の嫉妬が付き物だよね。
中には恐ろしい女もいるようで。
 
俺がパブをやってた頃にタカさんという知人がいた。
タカさんと女の嫉妬についての話をしてたらこんな話を聞かせてくれた。
 
「有也、俺の昔の話なんだけどな。」
 
 
タカさんは以前、新宿でホストをやってた。
そのお店はそこそこ有名な店だったらしく、スタッフもかなり居た。
 
その店は競い合わせるために5,6人のグループを作ってた。
タカさんも先輩の幹部の人(仮名:ショウさん)の下に付いていた。
そしていつもショウさんと一緒に接客したり飯を食いに行ったりしてた。
 
そんなある日、タカさんはショウさんの着ているコートを見てこう言った。
「カッコイイっすね、その毛皮のコート!」
するとショウさんは「いいだろ?貸してやろうか?ほら、着てみろよ。」と貸してくれた。
 
「え?いいんすか?ありがとうございます!」
タカさんが嬉しそうにそれを着るとショウさんは微笑んでこう言った。
「今日一日、おまえに貸してやるよ。」
 
タカさんはそのコートを着て嬉しくなり、その辺をプラつく事にした。
「すげぇカッコイイよコレ。なんか歩いてても自慢になるぜ。」
 
その時だった。
ドン
 
誰かが激しい勢いで後ろからぶつかってきた。
そして次の瞬間、背中に激痛が走った。
 
振り返ると震えながら立ち尽くしている女が一人。
背中が熱く脈を打っている。
 
刺された−
 
その時に初めてタカさんは自分の身に何が起こったのかを理解した。
背中から熱く血が流れてくる。
 
その女は震えながらこう口走った。
「え・・・?ショウじゃない・・・?」
 
タカさんは瞬時に理解した。
ショウさんと俺は背格好も似てる。
そして俺はショウさんのコートを借りてきている。
人違いで刺されてりゃ世話ねぇや。
 
女はパニくっている。
タカさんは女にこう言った。
「落ち着け。騒ぐと周りに気付かれるぞ。」
 
タカさんは自分の背中に刺さったままの包丁を引き抜いて裏路地に捨てた。
 
「おまえ、何やってんだよ。」
「ゴメンなさい!私、てっきりあなたがショウだと思って・・・!」
「わかったわかった。とりあえずオマエ逃げろ。」
「え!?だってあなたそのケガじゃ・・・!」
「俺は何とかする。ちゃんと病院に行くよ。おまえは逃げろ。」
 
女に背中を向け、タカさんは店へ向かって歩いた。
店の前にはショウさんが立っていた。
安心した瞬間、タカさんは倒れた。
「救急車お願いします。でも警察には言わないでください。」
 
そしてタカさんは病院で治療を受け、何針か縫ったらしい。
 
 
 
話を終えるとタカさんは笑って言った。
「あの時は参ったよ。」
「シャレじゃすまないっすねぇ・・・そりゃ。」
「いや、よくある話だろ。」
「マジっすか?おっかねぇ。」
 
 
「有也、俺そろそろ帰るわ。」
「あ、わかりました。じゃあタクシー呼びます?」
「いや、迎えが来てっからいいよ。」
「あ、そうなんすか?」
「あぁ、ベンツのリムジンがすぐそこに来てるはずだ。」
「え?マジっすか?」
「あぁ。じゃあまたな。」
「ありがとうございます、タカさん。またお願いします。」
「おぅ。」
 
 
実はこのタカさん、虚言癖があるので有名だ。
 
俺はこの時、『ベンツのリモ?ウソクセェー。』と思って後輩を見に行かせた。
「ホントかどうか怪しいもんだ。おまえ見て来い。」
 
5分ほどして後輩が帰ってきた。
「おぉ、お疲れ。どうだったよ?」
「有也さん・・・彼、なんかタクシー乗り場に向かってました。」
 
それを聞いて一同大爆笑。
「アッハッハ!この分で行くと刺された話もどうだか。」
「刺されたってのもウソだろ。あっても黒ヒゲ危機一髪のナイフじゃねぇの?」
「刺さらねぇ〜!」
 
 
水商売ってのはデマや噂話がよく飛ぶ。
何が正しい情報かを見極める力を持つ事が大事、ってね。
 
俺は自分で見たものしか信じねぇ。
一応、話には乗ってやるけどね。
 
 
2004/06/06


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